2日目 瑞稀 ページ3
8月2日 井上瑞稀。
井上：はぁ…
もう嗅ぎ慣れた消毒液の匂い。
ガラガラと転がす点滴スタンドの音が妙に耳元で響いた。
手には延命処置を望まないことを記した書類が入ったファイルを抱えている。
瑞稀から先生に出しといて。なんて言ってたお母さんの言葉を無視して未だに出していない。
昨日告げられた余命。
3ヶ月なんて言われてなにも考えられなかった。
1年前は普通の高校生活だったのに。
身体に大きな腫瘍があって見つかった時点で手遅れだった。
助けてくれる人も支えてくれる人もいない。
頑張って。
なんて言葉を言ってくれる人もいないのに。
死ぬことが怖いと思っている自分が醜かった。
？：ねぇ、君！
？：これ、落としたよ！
振り返ると制服姿の少年が嬉しそうにハンカチを差し出す。
ねぇ、今頃は俺もそっち側に居れたのかな。
井上：、、、俺のじゃありません。
？：まじ？
そう言った彼はフフッと笑うと
？：俺、橋本涼って言うんだけど、君は瑞稀でいいのかな？
彼は手で俺の手に巻いている名札を指差してニカッと笑いながら続ける。
井上：ん。
なにコイツ強引。
橋本：合ってた？よっしゃ！
俺漢字弱いから嬉しいわ！
俺は呑気な君が羨ましいよ。
死にたくないって気持ちを毎日抱えながら生きるのってものすごく辛いんだよ。
、、、君にはわかんないでしょ？
猪狩：はしもっちゃん〜！終わったんだけど！
橋本：はい！今から行きまっす！
じゃね！と去っていった君はまるで嵐のようだった。
今まで受けてきた意味の成さない手術。
1度も言われなかった愛しているの言葉。
受けられなかった親からの愛。
これまでの17年間はいいことがあったのだろうか。
それとも、
これからの3ヶ月で何か変わるのか。
井上：あ、あのっ！
橋本：？
井上：あ、したも会いたい。
なに言っているのかわからないけど、
君に何かを感じたのは事実。
橋本：いいよ。
井上：405。
橋本：わかった。明日また行くね。
そう言って笑った君は俺の頭に手を置いて去っていった。
その瞬間、胸が苦しくなってその場に倒れる。
〈井上くん！！〉
先生呼んで！なんて言葉を遠くに聞きながら
意識を飛ばした。
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わーちゃん - 面白い (2022年3月9日 19時) (
レス) @page2 id: 3919d3be97 (このIDを非表示/違反報告)
IRA(プロフ) - 面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2021年11月23日 9時) (レス) @page20 id: ec14ef5c84 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - すごく面白かったです。更新を楽しみにしています。 (2021年3月5日 20時) (レス) id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
き〜 - 続きみたいです！ 更新楽しみにしてます！ (2021年1月30日 19時) (レス) id: be0313a077 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - パセリまみれさん» 慎太郎くんにさせていただきました！いつもコメントありがとうございます！！ (2020年8月13日 15時) (レス) id: 7095de8d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あおいろ x他1人 | 作成日時：2020年7月22日 19時
