カクテル（JUMP×JUMP） (ページ5)

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大ちゃん今日はここに来て欲しい

いつもと違うメッセージ。
送られてきた住所も知らない場所で。
不思議に思いながらも、いつも通り了解と返事をした。

「お疲れ～。さ、行こっか」
「行くって、ここであってんの？」
「当たり前じゃん」

着いたのは高級ホテル。
しかも大ちゃんに連れられたのは客室じゃなく、レストランのほうだった。
お互い妻が作って待ってるから、いつも一緒に食事なんてしないのに。

「たまには贅沢したくてさ。付き合ってよ」

…それこそ奥さんと行けばいいのに。
そう思ったけど、オシャレな雰囲気と美味しそうな匂いにつられて、言い出せなかった。

「仕事、どう？」
「実は大きなプロジェクト始まってさ…」

…他愛もない会話なんて久しぶり。
仕事も、趣味も、性格も、気付いたら知らないことだらけで。
だけど、大ちゃんは昔から変わらない。
料理もワインも景色も、何もかも良くて、俺は舞い上がってしまってた。

…世間性とかなければ間違いなくこの人を選ぶのに、素直にそう思う。
今まで気付かないようにしてたけど、やっぱり俺はずっと大ちゃんが…

望んでもない"将来"を考えて結婚した。
今の妻となら、本気でやって行けると思ってた。
だけど俺に本当は気持ちがないこと、先に気付いたのは妻のほうだと思う。

冷めていく家庭と、大ちゃんとの熱い夜と、どんどん温度差が生まれて。
自分の気持ちに嘘をつくのはもう限界だと悟った。

…今日の時間はすごく楽しくて。
だけど、大ちゃんが俺を誘ったのはこの関係の終わりを示してる。
きっと「普通の友達」に戻ろうってサイン。

それなら俺は受け入れるし、友達としてでもそばにいられたらそれでいい、そう思っていた。

「今更こういうの言えるタイプじゃないんだけどさ、」

美味しい料理も最後の品がきて。
そろそろお開きという時間、口を開いたのはやっぱり大ちゃんだった。

「今日デートのつもりで誘ったんだ。いのちゃんのこと」
「え…」

思ってもみない言葉に、驚いて顔を上げる。
大ちゃんは左手の指輪をすっと外した。

「好きなんだ。いのちゃんが。
長い間素直になれなくてごめん。もう他のことはどうなってもいいから…いのちゃんと居たい」
「…！」

大ちゃんの言葉が嬉しくて涙が溢れた。
好きと口にすることが、どれだけ勇気がいるか…痛いほどわかるから。

「俺も、大ちゃんが好き。」

何年も温めてきた恋が、ようやく始まる音がした。

Fin.