カクテル（JUMP×JUMP） (ページ1)

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フラワー（ar×in）ページ1

＊「ジュース」のチューリップ続編
読まなくても大丈夫ですが、気になる方はそちらもぜひ。

「伊野尾ってやっぱりいのちゃんだったんだ」

久しぶりだね、ってさわやかに微笑んだのは忘れもしない元彼だった。

「ひ、久しぶり…」

あれから一年、会うどころか連絡も取ってなかった彼とまさかこんなところで再会するなんて。
俺に向ける笑顔も仕草も声も、驚くほどなにひとつ変わらない姿で彼はそこに居た。

「珍しい苗字だから、まさかとは思ってたけど」
「ははは…というか大ちゃん、転職してたんだね」
「そーそ。営業も良かったんだけど、動き回るの疲れちゃって」

世間話もそこそこに、仕事モードの彼はパソコンとにらめっこを始めた。

…知らない姿に不覚にもドキドキして。
あの日蓋をしたはずの気持ちがふつふつと湧き上がってくるような気がした。

「えーと、来月入居で探してんのか。」
「まぁ…そうだ、問い合わせてた物件は？」
「あそこねー。昨日タッチの差で決まったよ。」
「え、」
「今の時期はどこも取り合いなんだよね」

この辺でこの価格帯でしょー、なんて言いながらまたパソコンとにらめっこ。
俺と居た頃は別の仕事をしてたのに、こなれ感がすごい。

そういえば仕事する姿はあまり見たこと無かったな。
プライベートは不器用だけど、何かに打ち込むと熱心で、絶対に手は抜かない。
そんな姿に仕事ができるんだろうなと薄々感じてはいたけども。

「一応、似たような物件ピックアップしてみたけど？」

そう言って、さらっといくつか紹介してくれる。
ようやく戻ってきた視線は、もう恋人でもなんでもないのに優しくて…胸がぎゅっと締め付けられた。

…ああ、俺の知ってる大ちゃんだ。

いくつか出してくれた物件はせっかくだけど、どこも立地や家賃がイマイチで。

「………。」
「まぁ、そうなるよね。」

渋い顔の俺に、大ちゃんは同情気味だった。

「てか、まだあの部屋住んでんの？」
「…うん。」

契約更新はまだだし。
生活スタイルもなにも変わらない俺は、正直急いで次の物件を探す必要はない。

この感じだと、そうそういい物件無さそうだし。
今日は帰ろうかなって大ちゃんに伝えたいのに、喉がつっかえたみたいになかなか言葉は出なかった。

しばらくの沈黙、先に口を開いたのは大ちゃんだった。

「…ちなみに今日いのちゃんが最後で、俺もうあがるけど」

会いたいなんて思ってもなかったはずなのに気まぐれにこんな機会を与える神様はズルい。