もっぱら、君ばかり。（ar×in） (ページ7)

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好きの代償ページ7

「大ちゃん、今日は入ってこないで」

そろそろ寝ようかという時間、帰宅してから一言も口を利いてくれなかったいのちゃんがぶっきらぼうに言った。

「えっ、俺はどこで寝たら…」

「いいから、一人にしてっ」

パタンと寝室のドアを閉められる。
はぁ…なんでこうなったんだっけ…

今日は仕事の飲み会があって、俺も参加した。そこまではいい。

問題は、以前から俺に好意を寄せている女性も同席だったことだ。

とはいえ、俺にその気は無いし、その人がいるから行かないとも言えず、いのちゃんには内緒で行った。

そうしたら、帰宅時間確認のいのちゃんからの電話でバレてしまうという失態。

いのちゃんは静かに「大ちゃんのバカ」と俺を罵り、そこで電話が切れたから急いで帰ってきたのだけれど…

珍しく怒ってるな…こういう時のいのちゃんは静かだから逆に怖い。

「いのちゃん、ごめんって」

「…それはなんに対しての謝罪なの？浮気を認めるってこと？」

「違う、そうじゃなくて…」

「知ってて行ったんでしょ？俺に内緒で」

「……」

水分を含んだ声、ドア越しにいのちゃんが座り込む音がした。

はぁ、いのちゃんだけは絶対泣かせたくないのに。
自分の不甲斐なさに嫌気がさした。

「いのちゃん、直接顔みて話したい」

「…嫌」

「どうしてもダメ？」

「……」

今にも泣きそうないのちゃんの顔が目に浮かぶ。
それでも絶対に帰れとは言わないんだから、いのちゃんはやっぱり優しい。

…そして、寂しがり屋だ。

負の感情をあまり出さないいのちゃんが、俺に嫉妬を見せてくれるようになったのだって最近のこと。

嬉しいけど、あまり感じて欲しく無い気持ちだから。

「俺はいのちゃんしか興味無いよ」

「嘘」

「本当。今日だってお酒も飲んでないし、あの人とも何もないから。」

「絶対？」

「うん、絶対。」

ゆっくりドアを開けた。
座り込むいのちゃんを優しく包み込む。

「言わなかったのはごめん。でも俺の気持ちはいのちゃんにしか無いし、他の人はありえないから。」

「うん…」

「あーもう、泣くなって」

うるうるの瞳、こぼれ落ちそうな雫を指で拭った。

「泣いてねぇし…」

「うん」

「俺も、ごめんね」

いのちゃんは小さく謝って俺のパジャマの裾を握った。

「一緒に寝てくれる？」

「もちろ…うわっ、重！」

ヤキモチ焼きなお姫様をベッドに下ろす。
涙のあとが残らないように、優しく頬を撫でた。