もっぱら、君ばかり。（ar×in） (ページ5)

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甘い誘惑ページ5

「大ちゃん、マッサージして？」

お風呂上がり、ソファでスマホをいじっていた俺の足の間に座ったいのちゃんが言った。

「え？俺ど素人だよ？」

「今日はロケで歩き疲れたのっ」

振り向きざまの上目遣いで頼まれたんじゃ、言う通りにするしかない。

「はぁ～…コースはどうしますか？お客様」

「じゃあ全身で～」

お疲れモードなお姫様は湯上りの猫っ毛を揺らしながら嬉しそうだ。

当然同じシャンプーなのに、いのちゃんからはなぜか甘い匂いがする。

手始めに肩を揉みながらすんすんと、項に鼻を寄せた。

「ん～擽ったい…」

抗議しようとするいのちゃんの頭を押し戻して前を向かす。

…ていうか肩、結構凝ってんじゃねぇか。

「今日はどこ行ったの？」

「都内の宿泊施設まわった～」

俺がぐりぐり肩を押すと、なんだかんだ気持ちよさそうに目を細めてるいのちゃん。

一人の仕事帰りにこうやってたまに甘えてくるときは、癒してあげたいと思う。

いのちゃん、今日も頑張ったね。って思いを込めて優しく力を入れた。

「大ちゃんと…お出かけしたいな…」

小さなつぶやき、でも、俺は聞き逃さなかった。

いのちゃんは二人の気持ちじゃどうにもならないことを、自分だけのワガママだと思ってる。

…でもね。俺だって同じだよ。

「いのちゃん、旅行しよっか」

「え？」

「どこがいいの？教えてよ」

「…熱海、行きたい」

熱海かぁ、車で行くのもいいな。
部屋に温泉がついてるホテルなら貸切で入れるし、美味しいお店も早めに予約して…

肩を揉み終えて寝室に移動した。
いのちゃんを寝かせて背中にとりかかる。

いのちゃんを揉みながら、俺の気持ちはすっかり熱海に居た。

なんやかんや、いのちゃんのために計画を立てたり、尽くすのが好きだったりする。

俺は毎日、いのちゃんを笑顔にしたくて必死なんだよ。

「はい、おわり！」

そんなことを考えながら、ご要望の全身をくまなく揉みほぐしまくって、俺もボスんっと横になった。

「大ちゃんありがとう～」

目の前に、大好物のいのちゃんの笑顔。

条件反射とはこのことかと言わんばかりに、吸い寄せられて口付けた。

「えっ」

「…あ、ごめん無意識」

「なんだよ、大ちゃんのドスケベ」

ぶくぅっと効果音がつきそうなむくれ顔、それすらも愛おしい。

「寝る？」

「それなんだけどさ、」

「ん？」

「好きな人に、あちこち触られて…その気になんない奴っていると思う？」