もっぱら、君ばかり。（ar×in） (ページ13)

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そこに君がいるからページ13

「大ちゃん、手、貸して？」

俺からいのちゃんの手を取ると、嬉しそうに笑って絡めてくる指先。

「懐かし…なんも変わんないね？」

告白はいきなりベッドで、
いのちゃんは酔って泣いてて、
俺は緊張を隠すのに必死だった。

…だって何年もあたためてきた恋だったから。

「俺ね、あの日大学の友達と飲みながら大ちゃんの話ばっかしてたの」

「え、俺？」

「うん。もちろん名前なんて出してないけど、ずっと一緒にいる人好きになってこの気持ちに気付いてもらえない！ってそんなことばっか愚痴ってた…」

いのちゃんは小さな声でぽつりぽつり語りながら、繋いだ親指で俺の手の甲を撫でる。

ロマンチストなお姫様の、毎回俺と手を繋ぐときの、癖。

「だから俺んち来たの？」

「そ、無意識にね。俺は自分の家に帰宅したつもりだったから、ここ大ちゃんちじゃんって気づいたときは焦ったよ。」

「ふ、俺も。いきなり好きな子泊めることになったから超焦ってた。」

「嘘、大ちゃんそんなふうに見えなかったよ」

当時の俺はいのちゃんが大学楽しそうなのを嬉しく思いつつ、いのちゃんが俺から離れてくみたいで寂しかった。

ずっと隣に居るのは俺だったのに、って嫉妬して…だけどそんなこと言える立場じゃないし。

だから、大学の友達と飲みに行くって聞いた夜は会いたくて仕方なくて。

いのちゃんの気持ちと俺の気持ちが、あの日のベッドにぜんぶ詰まってるなって思う。

今こうして並んで見てる景色と変わらないけど、忘れたくない大切な気持ち。

俺といのちゃんのはじまり。

「好きだよ、いのちゃん。あの日から…いや、出会った頃から変わらない。俺はどこにも行かないよ。」

「ん、俺も…大ちゃん好き…」

やっぱりいのちゃんの好きの言葉は小さくて、だけどこんなにも胸に染みる。

繋いだ手はそのままに、身体を寄せてそっとキスをした。

数えきれないほど重ねた唇。
なんど味わっても、足らない。

「ん…ふ、ぅ…ぁ」

時折漏れる吐息が色っぽくて、愛おしくて、ずっと触れていたいと思う。

名残惜しいけど、そっと唇を離すと、いのちゃんはうるうるの瞳で満足げに微笑んだ。

「寝られそう？」

「うん、いい夢みられそ…」

言い切る前にもう重いまぶたが落ちてきてる。
いのちゃんは睡魔に襲われると絶対に勝てないから。

握ったままの親指でいのちゃんの手の甲をそっと撫でた。

もう嫌な夢を見ませんように、そんな願いを込めて。