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夜の静寂のなかで ページ12

俺がいのちゃんに幻滅とか、あるわけないのに。


「え?そんなこと?引いてないよ別に、」

「嘘、絶対迷惑だって…思ったでしょ、」

「そりゃ、いきなり来るもんだからびっくりはしたけど」

「ほらぁ…」

「わ、も、泣くなって…」


目の前で泣きじゃくるのは、俺より歳上で、先輩で、背が高くて、頭が良くて、大人ないのちゃん。


…なのにこんなにも可愛いのはずるい。


「俺に、引かれるのがそんなやだった?」

「バカじゃねぇの…」

「ね、教えてよいのちゃん。」

「〜〜っ、も、大ちゃん意地悪い…でも、」

「ん?」



_____”好き。”



それは小さな小さな、今にも消えてしまいそうな呟きだった。


「本当?」

「こんな嘘、吐くか、バカ…」

「ふふ、」


必死で顔を隠してるいのちゃんの頭を支えて目を合わせる。


うるうるの瞳は俺の反応を伺うように揺れた。


涙は今にも零れてしまいそうで、いのちゃんの不安とか、やっと口に出してくれた気持ちの真剣さが伝わる。


…ずっとわからなかった、俺たちの距離が。


俺はこのままでも良いと思っていた。


結局君の口から言わせてしまってごめんね。


「ん、俺も好き。付き合ってよ、いのちゃん。」

「…え?ほんとに?」


いのちゃんは信じられないと、目を見開いた。
まさか、あんな可愛く告白しといて自分だけだと?


何度も、え?とか、ほんとに?とか、繰り返すいのちゃんについに俺も痺れを切らした。


「もー、いのちゃんまだわかんない?」

「え、なに、」

「いのちゃんはその場のノリで俺がおっけいしたと思ってんの?」

「そうじゃん、俺いつも大ちゃんにアピールしまくってさ…ずっと一緒にいるし、断ったら気まずくなるからじゃないの…」


気持ち悪いでしょ、俺。って言いながらまた顔を隠してる。


俺は鈍感だから、今までいのちゃんがどんな気持ちで俺と話してたかわからない。


それに、今まで俺も好きだなんて素振りは見せたことがない。


…それがこんなに泣くほどいのちゃんを不安にさせてるなら、ちゃんと伝えなきゃ。


「いのちゃん勘違いしてる。俺はいのちゃんしか好きじゃない。…ずっと前から、こっちは」

「えっ、ずっと前っていつから」

「出会ったときから」


俺の方が気持ち悪いでしょ?って笑えば、いのちゃんは泣きながら、だけど少し笑ってくれた。


「俺と付き合ってよ、いのちゃん」


もう一度、今度は手を握って伝える。
いのちゃんは幸せそうに頷いてくれた。

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作者名:ららりる | 作成日時:2020年10月4日 21時

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