ジュース（JUMP×JUMP）

チューリップ（ar×in） ページ22

某バンドの曲から妄想しました。

※ 重、暗、切、悲
苦手な方はご遠慮ください。



in side




ベランダのチューリップが咲いた。


艶のある赤色で、真っ直ぐに上を向いて。綺麗というより、「まだ寒いのに健気だな」と思った。


「チューリップの球根買ってきた、ベランダに置いて育てよう」


大ちゃんが思いつきで買ってきたもの。最初は楽しく二人で見てたのにいつしか水をやるのは俺だけになっていた。


興味が無くなっていくのは明らかで、だけど俺は見て見ぬふりをした。


…きっとこのまま咲いたことにも気付かない。


「大ちゃん、起きて、」


「…ん？…まだ7時じゃん、寝かせてよ」


「チューリップ、咲いたよ」


「……」





"いのちゃんはいつも早起きだね"
"二度寝の良さわからせてあげる"
"ほら、おいで"
"ふは抱き心地サイコー、あったかい"





大ちゃんは生返事をして一人で布団に潜った。


俺はそんな背中にそっと擦り寄る。


…寒いよ、大ちゃん。








「昨日の夜、何してたの」


「昨日？言ったじゃん、会社の人と飲みだって。何度も言わせんな」


嘘つき。


「…見たもん、俺、」


違うって言って。


「あーそう、束縛すんの？めんどくさ、」


出ていかないで。


「離せよ、もう行くから」


振りほどかれた手は冷たくて、痛くて。


よろけて床に座り込んだ俺に、大ちゃんの顔は苦しそうだった。


立ち上がらせたら俺がしがみつくのを見越したのか、伸ばしかけた手はそのままドアを開けた。


…なんて呆気ない。言わなきゃ良かった。


だけど俺は馬鹿だから、大ちゃんの一番になりたくて。


「いのちゃんだけに決まってるじゃん」って言って欲しかった。


どうせ出てくなら振り向くなよ。

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