守れないお姉さんと守る少年 ページ5
柱に次ぐ階級
甲
そんなありがたい称号を貰っても守れない命は多くある
あと一手
あと一歩
間に合えば救える命は沢山ある。逆に言ってしまえば救えない命もある
パンッ!と空間に響く頬を打たれる音。私の手には焦茶色の羽織と空色の石のついた簪があった
「なんでこんな物だけを…っ!!返せ……返せよ!!あの人を…」
「………」
何も言えなかった、言わなかった。「ごめんなさい」も「助けられなくてすみません」もこの人に入った亀裂を悪化させてしまうと思ったから
ただ亡くなった彼女が必死に守るように抱えていたこの二つは決して汚さずに大切な人へと返そうと思って私はここまで来たのだ
謝罪は出来ない。抵抗も…出来ない
「返せ、返せ、返せ……返してくれよ」
「…っ」
頬はじんじんと腫れている感覚がし、切れた口からは血が出てきた
目の前の男の人も大粒の涙に比例して私を打つ力も強まってくる
「っもう、満足したでしょ?」
「っ!」
「…その羽織と簪の持ち主は片足が無くてもアンタの所へ帰ろうとしてたんだ。でも、僕達が来たときには既に血を流し過ぎていて……間に合わなかったのは僕達が悪い。だけどこれ以上、この人を打たないで…」
「無一郎くん」
少し下にある肩に手を置くと無一郎くんが振り向いた。その大きな瞳は困惑を示している
…心配してくれてありがとう
「これ、簪と羽織です。汚れはついていないので。大切にしてあげてください」
「……っ……ぁりがとう」
私は痛む頬を上げて微笑んだ。
動こうとしない無一郎くんの腕を引いて私達はその場を去った
「…今度人間に殴られたらその倍の力で倍の数僕が殴るよ」
「いやいや、無一郎くんが殴ったら一般人は気絶どころか下手したら死んじゃうよ…!」
88人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
榮(プロフ) - 茶柱さん» 応援ありがとうございます。鬼滅の刃本編の無一郎くんとは変わっちゃうかも知れないんですけど、綺麗だと言われて凄く嬉しいです! (2019年9月22日 21時) (レス) id: b9cbcbe26c (このIDを非表示/違反報告)
茶柱(プロフ) - 無一郎の感情表現が細やかで綺麗ですね。応援しています! (2019年9月22日 13時) (レス) id: f127cb7f36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:恊 | 作成日時:2019年9月10日 7時