世界の終わりは、きっと夏に来る (ページ4)

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消えていた冷房をつけ直して、簡易ベットに腰掛けた。仁王は開けた扉をもう一度施錠し、私の目の前のベッドに寝転んだ。細くて広い彼の背中をぼうっと眺めていた。

「そんなに見るな。照れるじゃろ」

「あれ、耳赤いんじゃない？」

「まーくん恥ずかしがり屋さんなんじゃよ」

まーくん、と反芻すると「なんじゃ」と私に背を向けたまままーくんが返事をした。仁王に“ま”は含まれないし、きっとこれは彼の名前からきた渾名なのだろう。これからはまーくんと呼ぼうかな、なんて思いながら私も横になった。

消毒液の匂いが漂うこの教室は、どこか時間の流れがゆったりと流れているように感じる。私と、隣で眠る彼以外に誰もいない部屋に、秒針の足音がやけに大きく聞こえた。耳を塞ぎたくなった。

体を起こして、仁王の眠るベッドに腰掛けた。ギシと骨組みが軋む音が響いたが、彼は起きる様子を見せない。未だに彼の前髪を留めていたピンを外して、ゴミ箱に捨てた。

「それ、借り物なんだが」

「………、ごめん」

「思っとらんじゃろ」

ベッドに戻った私と入れ替わるようにゴミ箱の前に立った仁王は、一瞬手を伸ばしたもののすぐに引っ込めた。私は、仁王の体温の残るベッドに横になった。

先程の私のように、ベッドの端に腰掛けた仁王は大きな欠伸を１つした。釣られて私も欠伸をした。また静かな時間が流れ始めた。なんとも形容し難い空気が、私たちの間を流れている。

「………、暇」

「………、暇だね」

「カラオケでも行くか？」

「カラオケとか行くんだ」

仁王の提案に驚きつつも了承したが、窓の外に見える唸るほど暑いであろうグラウンドを見ると、どうも起き上がる気になれなかった。ベッドの脇に座っていた彼も、動き出すそぶりを見せなかった。

「やっぱりやめるかのう………」

「そうしよ」

そう返事をした後、私は目を瞑った。