世界の終わりは、きっと夏に来る (ページ1)

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屋上から見える田舎とも都会とも言えない私の地元は、カンカンに照りつける太陽によって今にも溶け出しそうだった。そうなればいいなと思った。

世界の終わりはきっと夏だと思う。なにかしら地球に恨みを持った太陽が、人類を滅亡させるために夏になると地球に近づいてきている気がする。人間は我侭で強欲で、それでいて冷たい。ドン底に手を差し伸べる人なんてたった一握りで、他人のために生きている人なんて０に等しい。

世界の終わりをこの屋上でゆっくり眺めるのもいいかもしれない。いや、このままここで１人で終わってしまおうか。取り下げられた鉄の柵に手をかけると、太陽に容赦なく攻撃されていたそれは驚くほど熱かった。一瞬冷たいのかと思った。

諦めてまた日陰に戻って腰を下ろした。日陰に入ったところで湿度の高い日本の夏からは逃げられてはいなかった。これは気持ちの問題だ。

暫くぼうっとしていると、重たく錆びた扉が嫌な音を立ててゆっくり開いた。誰が来たんだろう、先生だったら面倒くさいな、なんて思っていると、白髪の男子生徒が顔を覗かせた。綺麗な顔立ちだった。

「先客か」

しっぽ髪をふわりと揺らして、私と人１人分離れた場所に腰を下ろした男の子はポケットからシャボン玉を取り出して、吹いた。太陽の光を反射して虹色に光る球体は、暫く自由気ままに宙を舞って、姿を消していった。

「シャボン玉は、終わりが見えていていいね」

「俺らの終わりだって、そう遠くはないかも知れんぞ」

独特の訛りと心地の良い声音の彼は、またシャボン玉を量産した。数分経って飽きたのか、彼はシャボン玉を傍に置いて目を瞑った。

「こんなところで寝たら死ぬよ」

「死にやせん。ちいと苦しくなって気失うだけじゃ」

「それは死ぬより辛いんじゃない？」

「さあな。死んだことないからわからん」

私のくだらない質問に答えながら、彼は目を閉じたままだった。本当にこのまま寝るつもりなんだろう。ポケットからスマホを取り出すと、もう少しで昼休みになろうとしていた。

彼の隣に置かれていたシャボン玉を手に取って、試しに１度吹いてみた。しかし、彼のようにたくさんのシャボン玉は生まれなかった。それに、上を向いて吹いたせいか液が口に入った。嫌な苦味が舌を覆った。

「下手くそ」

「やったことなかったから」

いつのまにか起きていた彼が、私からそれを奪い取るとまた吹き始めた。そしてまた、私は虹色に光る球体を眺めた。