【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる10 (ページ16)

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あのオーバーブロットを見た後では、さすがに言葉を濁らせてしまう。
……あ、そうだ。ツノ太郎で思い出したわ。

「そうだわ。ツノ太郎、ちょっと手を出して」
「？」

ツノ太郎が不思議そうに首を傾げるが、そっと手を出すと私はバスケットからお手製のクッキーが入った袋を取り出す。
お礼として渡せるよう常にラッピングされているそれを、私はツノ太郎の手の上に乗せた。
念のためにバスケット持ってきてよかったわ。

「今回助けてくれたお礼よ。お口に合えばいいのだけど」
「僕にくれるというのか……？」
「ええ。あなたにはお世話になったもの。これくらいの礼儀は当然よ」

そう言い切ると、ツノ太郎は珍しいものを見る目で私とクッキーを交互に見る。
そんなにおかしいことしたかしら？

「……そうか。なら、これはありがたく受け取っておこう」
「ええ、そうしてちょうだい」

私が微笑みながら言うと、ツノ太郎は小さく笑うもすぐに顔つきを変えた。

「……ん。僕はそろそろ自分の寮へ戻った方が良さそうだ。ではな。おやすみ」
「え、ええ、おやすみなさい」

そう言って、ツノ太郎は消えてしまう。
ちょうどその時、門の前で2人の生徒がここまで走ってきた。
暗くてあまり見えないけど……マジフト大会の時にヴァンルージュ先輩と一緒にいた人たちよね？

「……どうだ、いたか？」
「いや、こちらにはいらしていないようだ」
「西校舎のほうかもしれないな」
「ああ、若様……何故、供も連れずに外出など！貴様が目を離すからだぞ、シルバー！」

シルバー？……ああ、あの銀髪の人のことね。

「赤子じゃないんだ。大袈裟に心配しすぎだと思うが」
「なにかがあってからでは遅い。1秒たりとて気を抜くな！！」

……ちょっと。近所迷惑よ、その大声。

「貴様、若様の護衛という大役を仰せつかっている自覚があるのか！？人間でありながら、若様やリリア様に育ててもらったご恩を忘れたとは言わせんぞ！」
「はぁ……。それとこれとは関係ないだろう……」

シルバーさんがため息を吐くも、もう1人はいち早くどこかへ行ったせいで後を追う。
護衛とか色々と大袈裟ね。学園にいる時くらい、ちょっと肩の力抜いてもいいのに。

「それにしても、若様って誰よ……」

仰々しい呼び方だし、レオナ先輩みたいにどこかの国の王族がいると考えると納得ね。
その時強い北風が吹いてさすがにもう寒くなってきて、早く布団に入ろうと思い急ぎ足で戻った。