【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる10 (ページ2)

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「だって、なくなっちゃったんですよ、全部……アハハ……アハハハッ！このままじゃ昔の僕に戻ってしまう！」

それどころかおかしそうに笑う彼は、今までの見てきた姿が一切ない。

「あのさー、今のアズールって、昔のアズールよりずっとダサいんだけど」
「あ～～～～～～、そうですか。どうせ僕は1人じゃなにも出来ないグズでノロマなタコ野郎ですよ。だから、もっとマシな僕になるためにみんなの力を奪ってやるんです。美しい歌声も、強力な魔法も、全部僕のものだ！寄越しなさい、全てを！」

瞬間、アーシェングロット先輩から黒いオーラが溢れ出る。
彼の魔法の餌食となり、倒れていく。
まるで凶暴化した生き物が、見境なく周囲の餌を捕食していくような光景だ。

「何だよアレ？アズールの体から黒いドロドロが出てきてる。墨……じゃねーよな？」
「ユニーク魔法の使い過ぎです。ブロットが蓄積許容量を超えている！このままでは……オーバーブロットしてしまう！」
「あーっはっは！あ――っはっはっは！」

アーシェングロット先輩の哄笑と共に、黒いオーラが彼を包み込む。
ボタボタボタッとブロットが溢れ出て、白い魔法石を黒に染まっていく。

瞬間、アーシェングロット先輩の姿が変貌する。
現れたのは、黒いタコの人魚。
腰には巻貝、両肩にはフジツボ、背中から腰にかけて珊瑚が生え、左目には青紫色の炎が宿る。
背後にはアーシェングロット先輩と同じタコの人魚の姿をしたブロットの化身が現れ、巻貝型の瓶の頭部の天辺には王冠。手にはトライデントを持っている。

「ふな゛っ！アイツ、足がタコになったんだゾ！」
「あれが、海のなかでのアズールの姿です」
「あの後ろの何？オレでも絞められないほどデカイ！」
「今はアズールを正気に戻すことが最優先だ」
「じゃないと、オレたちもイソギンチャクにされちまうッス！」

確かに、このままでは彼の命も危ない。
彼には散々苦汁を飲まされたが、死を望むほど恨んでいない。
それに、こうなったのもある意味私のせいだ。それくらいの責任を取らなければいけない。

「行こう！」

――さあ、救おう。悪人だけど誰よりの奪われることを恐れた深海の商人を。