【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる35 (ページ1)

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EPISODE7-96 緊迫リミット！ページ1

旅を通じてユニーク魔法を顕現し、時間が流れていくにつれて、人との交流が増えたリリアさん。
今日も彼は『揺籃の塔』にいる卵に話しかけていた。

『あっという間に150年……か。俺ももう450歳……すっかりオジさんだ』

450歳ははたしておじさんと呼んでいいのだろうか。
そこはきっと、妖精特有の感覚なのだろう。

『これだけ巡っても、まだ行ったことがない場所があるのが驚きだ。世界ってのは、広いものだな。この150年で、外の大陸はかなり様変わりしたぞ。最近は様々な国で、夜の眷属にも渡航許可が下りるようになってきた。大分旅がしやすくなったよ。
　石を投げられることも減った……妖精と人間の対立は、人間の歴史の中じゃとっくに過去のものだ。どんなに抗っても人間(かれ)らの文明の発展は止められない。俺たち妖精はいずれ古きもの……御伽話の存在として忘れ去られていくだろう。
　だが俺は、これから生まれて悠久を生きるだろうお前を、御伽話の主人公にしたくないんだ、マレウス。だから早くその狭っ苦しい卵から飛び出してこい。外の世界は面倒なことも多いが、きっと卵の中(そこ)よりは楽しいぞ。なぁマレウス。お前が生まれたら、見せたいものがたくさんあるよ』

そう語るリリアさんの言葉に、卵は点滅する。
何度も何度も、まるでまた旅に行くリリアさんを引き留めるように。

そこから50年は、同じことの繰り返しだった。
リリアさんが旅に出て、『揺籃の塔』に戻って卵に話しかけ、また旅に出る。

そこで語られた土産話はどれも面白く、卵も楽しそうに聞くように点滅する。
だけど……無慈悲にも、時は待ってくれなかった。

【ヴァンルージュ殿、至急竜の都へ戻られたし。
　殿下の卵から、急速に魔力が失われつつあります。
　次の満月を待たずに、星にお還りになってしまうやもしれません。
　ヴァンルージュ殿には直接顔をお見せいただきたく……】