【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる34 (ページ50)

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親切な老人に連れられたのは、山奥にある一軒家。
暖炉の火がパチパチと弾ける中、老人はリリアさんの話に耳を傾けていた。

『へぇ。あんた、ドラゴンを探して旅してるのかい』
『ああ。迷惑をかけてすまなかった。すぐにおいとましよう』
『そんな身体で何言ってるの！このあたりの冬は厳しい。子どもひとりで山越えは無理よ。春までこの家にいらっしゃいな』

リリアさんの言葉に苦言を呈したのは、老人の妻らしき老婆だ。

『いや、そういわけには……』
『気にせんでいい。こんな山奥にお客さんが来るなんていつぶりだろうな』
『……あんたたち、この耳が見えてないのか？』

妖精族の自分に親切する老夫婦にそう問いかけると、2人はきょとんとしながらリリアさんの耳を見た。

『耳？……あらまあ！あなた、妖精さんなの？』
『それじゃああんた、もしかして子どもじゃないのかい？』
『てっきりうちの孫娘くらいの歳かと。子ども扱いしてごめんなさいねぇ』
『怖く、ないのか？』

正体を明かしても態度が変わらない2人に、さすがのリリアさんも目を丸くする。

『どうして？あなたは私たちに何も怖いことしていないわ』
『それは………………』
『春とは言わん。せめてこの吹雪が止むまではここにいるといい。冬の夜は長くてな。この老人たちの話し相手をしてくれんかね』
『……ふ、老人か。それを言うなら、俺のほうがずっと老人だ』

老人の言葉にリリアさんがそう返すと、老婆は小首を傾げて訊く。

『とてもそうは見えないわ。おいくつなの？』
『420……いや、もう430歳になる』
『そりゃ驚いた！わっはっは！そうだ、婆さん、温かい飲み物を用意しておくれ。この歳で人生の先輩に教えを乞えるチャンスだ。聞きたいことが山ほどある』
『そうね、素敵な語らいには飲み物が必要ね。私たちと同じものでお口にあうかしら？』
『……………………』

豪快に笑う老人に、飲み物を用意する老婆。
今まで出会った人間とは違う2人に、リリアさんの顔が柔らかくなり、この記憶の中では初めて笑みを浮かべた。