【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる34 (ページ46)

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『人払いは済ませてあります。殿下にお会いになられては？』
『会ったって、俺があいつにしてやれることなんかねぇよ』
『そう仰られますな。声をかけてさし上げれば、きっと殿下もお喜びになられる』
『…………それじゃあ、少しだけ』

バウルさんが催促され、リリアさんは卵に近寄る。
リリアさんの気配を感じたのか、卵が淡く点滅した。

『よう、マレウス。2年ぶりだな。お前がいつ星に還っちまうかとヒヤヒヤしてたが……粘ってるじゃねぇか。ん？』

リリアさんが話しかけると、卵はまた点滅する。

『ずっと寝てるだけじゃ、退屈だろう。少し……土産話でもするか。先日まで輝石の国を巡ってた。どれも無駄足だったが……いや、湿っぽい話はよそう。旅先の街で、盛大な祭りがあってな……食べ物の出店が沢山あって……ヤギの乳で作ったチーズが美味かった。
　……こんなしょうもない話をしてもなんの意味もねぇな。次は南に足を延ばすつもりだ。今度は何か有益な情報が手に入ればいいが。……じゃあな、マレウス。くたばるなよ』

そう言って、リリアさんは『揺籃の塔』を後にする。
だけど、卵は立ち去るリリアさんを引き留めるように、激しく点滅した。

場所は変わり、熱砂の国。
カラフルな布が目を刺激する市場で、1人の商人がリリアさんに話しかける。

『旅人さん！魔法のランプはいかが？』
『魔法のランプ……？』
『そう。軽くランプをこすればたちまち『お呼びですか？』と中から魔人が現れる。魔人は3つだけ願いを叶えてくれるんだ。素敵だろ？』
『願いを叶える……ドラゴンの卵を孵す、なんて願いでも？』
『ドラゴンって……御伽話に出てくる、あのドラゴン？モチロンさ！ランプの魔人ならできると思うぜ。まあ、このランプはレプリカだからこすっても魔人は出てこないけど。それで、買うの？買わないの？』
『……やめておこう。旅の荷物は増やしたくない』
『土産は旅の醍醐味だと思うけどねぇ。買わないんなら商売の邪魔だ、どいたどいた！』

商人が手の平を返してリリアさんを追い払うと、本人はため息を吐きながら店を後にする。

『御伽話、か。ドラゴンは昔と変わらず生きているんだがな……。もしかすると、伝説の魔人も今もどこかで生きているのかもしれない。もう少し情報を集めてみるか。しかしっこの国は日差しが強くて、かなわねぇな……はぁ』

容赦ない日光を浴びて、リリアさんはまたため息を吐いた。