【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる34

EPISODE7-92 使命アブサード！ ページ43

ツノ太郎が星に還る。
その事実は、マレノア様を失った傷がまだ癒えていないリリアさんにとって、あまりにも残酷な内容だった。

『そんな…………！』
『卵がわずかしか魔力を受け取らないため、女王陛下は通常必要とされている何倍もの魔力を注いでおられる。マレフィシア様はすでにご高齢であり、これ以上のご無理はお身体に障ります。
　茨の国……いや、茨の谷はいまだ混乱の渦中にある周辺諸国との緊張状態も続いています。女王陛下の肩にはこの国の命運がかかっており、卵に付きっきりになることはできない』

バウルさんの言葉は、正論だった。
いくら大事なお世継ぎとはいえ、女王陛下がずっと卵の世話をすることなどできない。

しかし、ここでツノ太郎を見捨てれば茨の谷の存続は危うくなる。
それを全て察したリリアさんは、鋭い目つきでバウルさんを睨む。

『……それで？』
『ヴァンルージュ殿、どうか竜の懐刀と呼ばれたあなたのお力を貸していただきたい』
『力を貸す？この俺に何が出来るってんだ。懐刀ところか、お役目も果たせなかった役立たず……ただの“泥付きの蝙蝠”だぜ、俺は』
『誰がなんと言おうと、女王陛下と私はあなたを信頼している。……あなたには、外つ国に渡りドラゴンの卵を孵す方法を探してきていただきたい』

バウルさんの言葉に、さすがのリリアさんも動揺した。

『外つ国……って。茨の谷の妖精が人間の国に渡れる手形なんぞねぇだろう？』
『ええ、ありません。――“表向き”は』

表向きはない。
だけど、それは何かしらの裏取引で得た手形があると言外に伝えられた。

『………………は、はは！あははははははは！あのお方も無茶を言いやがる。俺になんの得があるってんだ』
『ありません。何も。ただ…………覚えていますか？マレノア様に最後の謁見をした時のことを』
『最後の謁見……』

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