【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる34 (ページ38)

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「お待ちください！右大将殿はマレノア姫様の勅命で、お世継ぎを守るために……！」
「……よせ、バウル。ご老公がたの言うとおりだ。今日をもって私は……王宮近衛隊を退役いたします。右大将のお役目、返上させていただく。部下たちは私の命令に従っただけ。寛大な処分を、平に……平に伏して申し上げる」
『役目の返上などでは生ぬるい！二度とこの都に踏み入るではないぞ！』
『早くお世継ぎの卵からその汚濁にまみれた手を離しなさい！けがらわしい！』

頭を下げるリリアさんに、さらに罵声を飛ばす元老院。
遂に、私の怒りが抑えきれなくなった。

「さっきから黙って聞いていれば……！」
「あっ！リリアの腕から卵がすり抜けてふわふわ飛んでいっちまう！」
「くっ……元老院め！お待ちください！その卵、もしもの時は右大将殿が孵すようにとマレノア姫様は仰いました！いかに元老院のお歴々といえど、ドラコニアの勅命に背くことは許されぬはず！」

バウルさんの反論は、元老院にとってはもはや気にかける価値もないのだろう。
ツノ太郎の卵はふわふわと飛んでいき……やがて、黒鱗城に吸い込まれるように消えていった。

「………………じゃあな、マレウス」

横暴すぎる元老院の対応に、リリアさんは恨み言ひとつも言わず、あっさりとした別れを告げると、そのまま踵を返した。

「はっ！う、右大将殿！一体どちらへ！？マレノア姫様の勅命を、反故にされるおつもりですか！」
「……俺はもう、近衛兵じゃねえ。姫君の勅命に従う義理もねぇだろ」
「そんな……！」
「もうここに俺の居場所はない。守るべきものも、ない……」
「ヴァンルージュ殿……待ってください！」

シルバー先輩が縋るように手を伸ばす。
だけど、その手はリリアさんによって振り払われた。

「もう……放っておいてくれ」

深い絶望と後悔、そして無力感を宿った言葉を告げられた直後。
まるでタイミングを計ったように、ぐぶぶぶぶ…………と『闇』が現れた。

「！？なんだ！？この黒く禍々しい気配は！」
「あれは……『闇』！？」
「親父殿の絶望に引き寄せられたのか！くそ、囲まれた！」
「リリアさん！早くこっちに来て！」

必死に呼びかけるも、リリアさんは『闇』の声を聞いて夢現のようにふらりと歩み寄る。

「……マレノア、レヴァーン……そこにいるのか？」
「その先に行ってはダメだ！『闇』に囚われてしまう！ヴァンルージュ殿！」
「連れて行ってくれ……俺も、そっちに……」