EPISODE7-73-5 腹が減っては戦はできぬ ページ34
飛行術は、魔法を連発するのとは違い、常時魔力を消費しながら使う術だ。
どんな種族でも常に一定量の魔力を使うのは一苦労だし、それは妖精族も例外ではない。
たとえリリアさんにしごかれている近衛兵でも、面越しではあるが全身から疲労が伝わってきた。
「流石に隊の者たちに限界がきているな。紅が原を一気に飛んできたのだから、当たり前か……右大将殿、小休止をとりましょう」
「仕方ねぇな。確かにこのままじゃ野ばら城にたどり着いても戦えないヤツが続出しそうだ。だが、取る物も取り敢えず退却してきたから、食い物も水もねぇぞ」
小休止前に食糧調達しそうな雰囲気が出たが、その前にシルバー先輩はすぐさま食べ物が入った袋を見せた。
「あの、パンとベーコンと水なら……みなさんの分もご用意があります」
「おお、でかしたぞ。しかし、一体どこで調達した？」
「東の砦の厨房にいた料理人が持たせてくれました」
「なにっ？人間が！？」
シルバー先輩から伝えられた経緯に、バウルさんたちは警戒心を見せるも、セベクは料理人の言葉を思い出しながら言った。
「『俺たち料理人は腹が減ってるヤツに飯を食わせるのが仕事なんだ。妖精の口に合うかはわからないけど、持っていきな』と……」
「心配しなくても、毒なんて入っていません。あの料理人さんたちは、自分の仕事に対する誇りを裏切るような人間じゃない。……少なくとも、私はそう思います」
「「……………………」」
「「「……………………」」」
セベクと私の言葉に、誰もが無言になる。
きっと、彼らだってわかっているのだ。
人間にだって、良い人と悪い人がいることくらい。
それを素直に認めることができないほど、互いの間に深い溝が生まれてしまった。
それを理解しているのか、リリアさんが袋の中から食べ物を取り出した。
「敵に送られた塩でも、舐めたい状況だ。ありがたくいただこう」
リリアさんを筆頭に、バウルさんたちも食べ物を手に食べ始める。
色々と複雑な葛藤はあるだろうが、最優先すべきことは野ばら城への帰還だ。
それをわかっているからこそ、みんなは黙って食べる。
もぐもぐと咀嚼する彼らを横目に、私たちも料理人たちからもらったパンやベーコンを食べる。
何も塗っていない、パンの間にベーコンを挟んだだけのそれは、色んな意味で素材の味が感じられた。
だけど、私は一生この味を忘れないだろう。
人間の純粋なる善意と、妖精の複雑な葛藤が入り混じったこの味を。
EPISODE7-73-6 外れてほしかった→←EPISODE7-73-4 学園での学びは無駄じゃない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ツイステ」関連の作品
【ツイステ】悪役だけを。◆５２◇
あの人は婚約者、あの人は…結ばれない好きな人 4【マレウス・ドラコニア】【ヴィル...
光属性の彼女はナイトレイブンでにいくようです( ｰ̀֊ｰ́ )...
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブロッサム(プロフ) - 見ましたよ！やばかったです！多分夢主のことですから、フェローを見て（あの人、良い毛皮が取れそう……）と最初に思いますね！ (10月16日 22時) (
レス) id: 18fafb8a30 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - ステージ・インプレイスルランド 〜踊る人形と幻の遊園地〜。見ましたか！？何もかもやばかったですね！開始が待ち遠しいです！この小説の夢主がどのようなことをするのか楽しみです！ (10月16日 20時) (レス) @page31 id: e7ce89d83f (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - ありがとうございます！ (9月10日 20時) (レス) id: b52f0561ce (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 更新はゆっくりでいいですよ (9月10日 18時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ブロッサム | 作成日時：2023年8月14日 17時
