＊ ページ14
そう思い返した直後、シルバーの脳内にこれまでリリアと過ごしてきた記憶が蘇る。
どれも大変だけど楽しく、父親としての愛情を感じられた日々。
それがもう二度とないと思った途端、目頭が熱くなる。
「……………………っ」
「ふむ……ここで悩んでいてもキリがないな。送別会に向かおう」
「…………先に……戻っていて、くださいますか」
「シルバー？」
「俺も、すぐに、追いかけます………グスッ」
彼のオーロラ色の双眸から涙があふれ、鼻を啜る。
それを見て、マレウスはシルバーの顔を覗き込む。
「どうした？……泣いているのか？」
「も、申し訳、ありません。グスッ……情けない姿をお見せして」
「別に情けなくなどない。子どもは泣くものだ」
「俺はもう17です。来年成人します。マレウス様や親父殿から見れば、子ども同然でしょうが……」
シルバーはそこまで言うと、過去を思い出すように言った。
「17年前……親父殿は茨の谷の森の奥深くで、赤子だった俺を拾った」
「…………」
「親父殿は妖精、俺は人間です。血のつながりも、育てる義務も……なにもない。なのに、あの人は俺を我が子同然のように育ててくれました。毎日食事を与え、稽古をつけ、寝込んだ夜は一晩中そばにいてくれた。
妖精と人間は、脆さも成長スピードも……なにもかも違う。茨の谷には人間の育て方を知る者がほとんどいない。そのうえ父は独り身です。頼れる相手もいない中、手探りで人間の赤ん坊を育てるのがどれほど大変だったか……感謝してもしきれません。
一生かけて、恩を返していくつもりでしたッ……！なのに……まだ俺は、あの人になにひとつ返せていないのに！あの人は独り、遠い国で最期を迎えようとしている」
「………………」
シルバーの口から語られる、リリアへの恩義と愛情。
それがマレウスにもひしひしと伝わってきた。
「俺はっ……親父殿が魔法を使えなくなり、身体が衰えて……もしすべてを忘れてしまう日がきても、ずっと側で支えていけたらと……！」
「……リリアは良い息子を持ったな」
「全然良い息子なんかじゃなありません。父親の願いひとつ、叶えてやることができない。あの人の望み通り、笑顔で送り出してあげたいのに……俺は、俺は……っう、ううっ……！」
「…………」
堪えいきれなくなり、シルバーの目から涙が溢れ零れる。
それをマレウスは、ただ静かに見守ることしかできなかった。
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ブロッサム(プロフ) - 誤字報告ありがとうございます！ (6月1日 14時) (
レス) id: b52f0561ce (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 訂正があります。42ページの【森】が【盛り】になっていました。 (6月1日 13時) (レス) @page42 id: 7e57969e52 (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - ああ、確かに似てますね！ (5月29日 16時) (レス) id: b52f0561ce (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 来ました！更新！メインストーリーを読んでいると、鬼滅の刃無限列車編みたいだなぁと思いました。 (5月29日 14時) (レス) @page35 id: 7e57969e52 (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - 来ましたね！更新が再来週の月曜日になりますが、しばらくお待ちください。 (5月20日 16時) (レス) id: b52f0561ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ブロッサム | 作成日時：2023年3月11日 2時
