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『人間の赤ん坊は、妖精と違って花の蜜では育たんらしい。“粉ミルク”なるものを飲ませろと本に書いてあってな。“乳”なのに“粉”とは……どんなものか想像もつかないんじゃが。このへんじゃ手に入らんから、人間用の品が売っている店まで行って来る』
『ま、待てリリア！こんな小さな生き物、僕が触ったら壊してしまうぞ』
『大丈夫じゃ。優しく撫でながら子守唄を歌ってやれば、泣いていてもころっと眠る。すぐに戻るゆえ、頼んだぞ！』
『おいっ、リリア！』
空間転移で消えたリリアにマレウスが制止かけるも、一歩遅く。
彼が消えた直後、赤子のシルバーはそれを察したのか目を覚まし、じわりと涙を浮かべた。
『う……うう――。ふぁっ……』
『まずい。目を覚ましたか？』
『ふっ……ふううっ……ほぁああああん！ぎゃあぁああああん！』
直後、赤子のシルバーは大声で泣き出し、マレウスはその声量の高さに慄きながらも顔をしかめる。
『うっ……なんてうるさい鳴き声だ。子守唄を歌えば眠る、だと？僕が子守唄など知っているわけが……』
『ふぎゃああああああ！！！』
『………いや、待てよ……1曲だけなら、僕も知っている』
マレウスがそう言い切る前に、赤子のシルバーの鳴き声を聞きながらふと思い出し、静かに鼻歌を口ずさむ。
『〜♪』
それは、さっきまでリリアが歌っていた子守唄と同じ曲調。
『あ――……ぐすっ、ふぁっ……』
『〜♪』
『う……うー……』
『〜♪』
『すー……すー……』
マレウスの鼻歌を聴いて、泣いていたのが嘘のように赤子のシルバーの目が閉じていく。
やがて静かな寝息が聞こえると、マレウスは目を丸くしながらゆりかごを覗く。
『………本当に、寝た。はぁ……リリア、早く帰ってきてくれ』
未だ返ってこない家主の名を呼びながら、マレウスは小首を傾げる。
『それにしても、僕はどこでこの子守唄を聞いたのだろう。もう覚えていないが……乳母の誰かが歌っていたのだろうか？』
「…………マレウス様……」
シルバーは知っていた。
彼がこの子守唄を知っているのは、マレノアが卵の時に歌っていたことを。
だけど実父を含む『銀の梟』によって、それを知る機会を奪ってしまった。
激しい罪悪感に蝕まれながら、シルバーは『闇』へ戻った。
EPISODE7-81-5 『闇』を彷徨う→←EPISODE7-81-4 追憶の幕間1-1
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ブロッサム(プロフ) - 脱字報告ありがとうございます！ (11月29日 14時) (
レス) id: 2d3621a68f (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 訂正があります。今日更新したシルバーのセリフのどうしてのうが抜けてます。 (11月29日 14時) (レス) @page48 id: 1893bd7a09 (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - 誤字報告ありがとうございます。 (11月19日 15時) (レス) id: b52f0561ce (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 訂正があります。36ページのセベクのセリフにある【師弟】が【指定】になってますよ。 (11月19日 15時) (レス) @page36 id: 48a8f87c53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ブロッサム | 作成日時：2023年10月28日 20時
