＊ ページ32
「おぉ……栓をあけただけで林檎の甘酸っぱい良い匂いが」
「本当、色も綺麗だし美味しそう」
「みずみずしい香りだ。私もいただこう」
最初にグラスを手に取ったハント先輩が飲む。
すると、ハント先輩が驚いたように目を開くも笑顔を浮かべた。
「これは……セ・ボン！実に美味だよ、エペルくん！」
「どれどれ、オレにも一口くれよ」
ハント先輩の反応を見て、カリム先輩が別のグラスを手に取り飲み始める。
私たちもつられて飲むと、その美味しさに目を見開いた。
「おぉ〜、本当にうまい！林檎そのものって感じの味がするぜ！」
「林檎100％なんだから、それはそうだろう。うん、でも……確かに美味いな」
「さっぱりしてて、いくらでも飲めちまいそうなんだゾ〜！」
「こら、グリム！瓶に口をつけるな！」
「まあラッパ飲みしたくなるのもわかるかも。ごくごくいけんね」
「そうね。こんなに美味しい林檎ジュースは初めてよ」
品種がいいのか、それとも独自の製法があるのか、この林檎ジュースは今まで飲んできた林檎ジュースの中でも一等美味しい。
「酸っぱすぎず、甘すぎず。のどごしの爽やかさはまるで林檎畑を吹き抜ける涼やかな風のようさ。愛情を込めて真摯に作られているのがわかる逸品だ」
「そうでしょう！このジュースは何種類かの林檎をブレンドして作ってる、故郷の自信作なんです！はちみつを混ぜれば喉にも良いし歌の練習の後にはピッタリかも！」
いつもの暗い顔が消え、嬉しそうに林檎ジュースの良さを語るエペル。
その顔は最近見ていなかったせいで、少し安堵する。
「あ、ジュースだけじゃなくて、とれたての林檎もたげんめぇ……美味しいんですよ！」
「はっはっは！熱の入ったトークだ。良いね。ムシュー・姫林檎が故郷をとても愛しているのが伝わってくるよ」
「でも…………」
しかし、その顔はすぐに消えて見慣れた暗い顔に戻った。
「輝石の国の片田舎で作っているせいかどうも知名度が低くて……」
「へぇ。こんなに美味いのに、なんかもったいないなあ」
「年々観光客も減ってて、このままじゃ………」
「アンタたち。いつまで談話室にたむろっているの？」
エペルが元の世界でもあった悩みを語った直後、自室に戻っていたはずのシェーンハイト先輩がやってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブロッサム(プロフ) - 絵が上手くないので難しいです！むしろ誰か描いてください……！ (2021年2月10日 17時) (
レス) id: e227af577a (このIDを非表示/違反報告)
ユノ - 夢主人公のイメージイラストが見てみたいです (2021年2月10日 15時) (レス) id: 2a665cb182 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ブロッサム | 作成日時：2021年2月8日 16時
