ある少女の過去 ページ19
――物心ついた頃の最初の記憶は、喧嘩をする両親の姿だった。
『何故Aはあんなに俺にもお前にも似ていない!?本当は浮気して別の男でも作ったんだろう!?』
『私がそんなことするわけないでしょう!?10年以上も連れ添った私を疑うなんてひどいわ!!』
銀灰色の髪、虹色に変わる不思議な黒い瞳、幼くも凛とした顔立ち。
父と同じ黒髪も、母と同じ柔和な顔立ちも受け継いでない。
DNAだけは一致しているのに、両親に全然似ていないひどく美しい天宮家の次女。
それが、この私だ。
『DNA鑑定した以上、俺の娘なのは間違いない。……だけど、俺はどうしても、お前を娘だと認められない』
『あなたのせいで私は浮気を疑われたのよ!?あなたなんか娘じゃない!この家に不幸を呼び、人生をおかしくする疫病神よ!!』
DNA鑑定で正真正銘の娘だと判明しても、父は私を娘として認めることができず。
母はヒステリックに叫びながら私を『疫病神』と罵った。
早々に両親から疎まれた私は、健気にも天宮家の娘として恥じない振る舞いを学び始めた。
毎日努力し、勉強も、スポーツも、マナーも、習い事もすべて完璧にこなした。
しかしそれは、逆に私をさらなる孤独へと追いやった。
『その年で高校の勉強もできるとか……お前、やっぱり異常だよ』
『ねえ、わたしが周りからなんて言われてるか知ってる?「淑女として年下の妹に負けている天宮家の姉」よ?こんな屈辱を味あわせて楽しいの?』
10歳で中学ではなく高校の勉強もできるようになった私を兄は薄気味悪く感じ。
姉は淑女として私に負けていると周囲にバカにされ、味わう必要のない屈辱を与えてしまった。
そして――
『お姉様。私……お姉様と比べられるはもう嫌。やることなすこと全部、お姉様を賞賛するダシに使われる。誰も私を見てくれない。みんな、私の向こう側にいるお姉様を見ているのよ』
同じ日に生まれた、両親の遺伝を受け継いだ双子の妹。
私と比べられ、心が擦り減り、限界まで追い詰めてしまった。
『お姉様なんて――生まれてこなけばよかったのに』
そう言われて、ようやく気づいた。
みんな、私に消えてほしいのだと。
異常でおかしい私から解放されたいのだと。
心の底から生まれなければよかったと願われるくらいに。
現実を思い知り、理解したその日。
私は、家族の縁も切る道を選んだ。
――それが、私から家族への、最初で最後の贖罪だと信じて。
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だしのもと - 威月さん» 作者様じゃなくてすみません。確かにジューゴに似てる… (2022年4月7日 17時) (レス) @page3 id: bbe118badb (このIDを非表示/違反報告)
威月(プロフ) - これから作品を読み始めるものです。設定を見てすこし思ったことがあってコメントさせていただきます。間違ってたらほんとにごめんなさいなんですけど夢主ちゃん、『ナンバカ』のジューゴを参考にしてますか?目についてや嫌いなものが一緒だったので……… (2022年3月29日 17時) (レス) @page3 id: 4af538b452 (このIDを非表示/違反報告)
ネコマタさんのちょびひげ - わああああ!!あのメイデーアだ!!(・д・ = ・д・)応援してます!!( ゚Д゚)ゞ (2020年12月29日 19時) (レス) id: d3a88c7d37 (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - 感想ありがとうございます!結構書き残しとか修正とかで内容は変わる時もありますが、応援よろしくお願いします! (2020年10月27日 23時) (レス) id: d825f142fb (このIDを非表示/違反報告)
ウサリボン - ブロッサムさん» この小説大好きです。更新楽しみしてます。 (2020年10月27日 23時) (レス) id: 522e3de4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ブロッサム | 作成日時:2020年10月26日 2時