PROLOGUE5 同室ヴァリアス! ページ13
古びた門の向こう側にある、三階建ての建物。
窓には板が打ちつけられ、葉っぱ一枚ない木々は寒々しい。
これから宿として使う寮は、学園長の言う通り趣がある……というかありすぎた。
「あの…………本当にあそこでいいんですか……?」
「雨風さえ凌げれば大丈夫です」
「見た目に合わず逞しいですね……まあいいでしょう、では中へ」
学園長にエスコートされて中に入ると、壁紙はシミだらけで埃は雪みたいに積もっている。
床もところどころ痛んではいるが、柱などは意外としっかりしている。
今いる談話室も含め、ボロい点を除けば一人で暮らすには充分すぎる広さだ。
「私は調べ物に戻りますので適当に過ごしていてください。学園内はウロウロしないように!」
「ついでに食事もお願いできますか?少し小腹が空きました」
「もちろんです!レディを飢え死にするような真似はいたしませんよ!」
ちゃんと性別をカミングアウトしたおかげなのか、学園長はすぐ了承すると談話室を出て行く。
しかしこうも埃っぽいと過ごせないため、私はここに来る途中で学園長が急遽用意してくれた私服を紙袋から取り出す。
今、私が着ている服は学園の式典服で、学内行事や防衛魔法の授業で使うものらしい。
なるべくシワを作らないように綺麗に畳み、用意してくれた私服に着替える。
紫色のパーカーと白いTシャツ、それと黒いジーパンにシューズと家にいた時ではありえない恰好になる。
「まずは掃除ね……」
談話室の隅に置かれた掃除道具を手に、ひとまずここと自室として使う部屋、それとキッチンとお風呂場とトイレを掃除することにした。
かなり長い間住んでいなかったのだろう。壁の絵画は外れたり傾いていたり、天井に蜘蛛の巣がたくさん張っている。
キッチンとお風呂場、それにトイレは奇跡的に故障していなかったが、キッチンの蛇口を捻って出てきた水は見事な錆色だった。
てきぱきと掃除を済ませ、談話室に戻ると窓の外は薄い霧が立ち込め、大粒の雨が降ってくる。
意外と雨足が強いなと思っていると、天井から水滴が落ちてきた。
「雨漏りもしてるみたいね。学園長に修繕も頼んで――」
「ぎえー!急にひでぇ雨だゾ!」
「!!!!」
聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、そこにいたのはさっき追い出されたはずのグリムだった。
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だしのもと - 威月さん» 作者様じゃなくてすみません。確かにジューゴに似てる… (2022年4月7日 17時) (レス) @page3 id: bbe118badb (このIDを非表示/違反報告)
威月(プロフ) - これから作品を読み始めるものです。設定を見てすこし思ったことがあってコメントさせていただきます。間違ってたらほんとにごめんなさいなんですけど夢主ちゃん、『ナンバカ』のジューゴを参考にしてますか?目についてや嫌いなものが一緒だったので……… (2022年3月29日 17時) (レス) @page3 id: 4af538b452 (このIDを非表示/違反報告)
ネコマタさんのちょびひげ - わああああ!!あのメイデーアだ!!(・д・ = ・д・)応援してます!!( ゚Д゚)ゞ (2020年12月29日 19時) (レス) id: d3a88c7d37 (このIDを非表示/違反報告)
ブロッサム(プロフ) - 感想ありがとうございます!結構書き残しとか修正とかで内容は変わる時もありますが、応援よろしくお願いします! (2020年10月27日 23時) (レス) id: d825f142fb (このIDを非表示/違反報告)
ウサリボン - ブロッサムさん» この小説大好きです。更新楽しみしてます。 (2020年10月27日 23時) (レス) id: 522e3de4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ブロッサム | 作成日時:2020年10月26日 2時