#07 ページ8
八乙女side
屋上から見える景色はいつもと変わらず綺麗。
でもなんか今日は違う気がした。
空は晴れてるのに何処か曇ってる気がして。
なんかハッキリしない景色だ。
ふと屋上から下を見るとαクラスへ帰る"あの人"の姿が。その姿は勇ましくもないどちらかと言うとダサい感じがあった。
姿にダサいなんて失礼だけど。
「あ、光〜！やっぱここか〜」
「あ、伊野ちゃん…」
「もう、急にどっか行っちゃうんだもん。びっくりしたよ〜」
そうやってヘラヘラ笑いながら俺の隣へ来る。
「ねぇ、光。これ」
そう言って渡されたのは"薮宏太"と言う文字と電話番号が書かれた紙。
「それ、あの人の名前とあの人の電話番号。なんかあったら連絡してって」
…なんで。
電話番号なんて要らないよ。何のために？
俺になんかあったとしてもあの人には関係ない。それなのになんで電話番号までくれんの。
考えてる事が分からない。行動が意味不明。
そんな事ばっかが頭を巡った。
「要らないよ。伊野ちゃんが貰いなよ」
「…そっか。」
そう言って伊野ちゃんは紙を握りしめ、屋上の下を見た。
「薮宏太。いい人だったね」
「…なんだよ急に」
「冷たいなぁ…光もそう思ったくせに。」
伊野ちゃんは全てを分かっているような顔でチラッとこっちを見て微笑んだ。
「素直になってもいいと思うよ。受け取っときなよ。」
そう言ってぐしゃぐしゃになった紙をまた俺に渡した。半ば強引に。返そうとしても伊野ちゃんは拒んだ。
「悪い人じゃないって。きっと愛してくれるよ。この人、いい人だもん。」
そう言って屋上から出ていった。
愛が欲しいのは伊野ちゃんだ。
愛に飢えてるのも伊野ちゃんだ。
俺じゃない。
"この人、いい人だもん"
そう言った伊野ちゃんは真剣な顔だった。
きっと本気で狙うつもりなのかもしれない。
あのαと仲良くなってαが嫌いな俺とは関わらなくなるかもしれない。
それでもいいと思った。どうせ俺は1人だから。振り出しに戻るだけ。
少し雨が降ってきたと思ったら一気に土砂降りになった。誰もいない屋上で1人突っ立ってる俺は誰といてもこの孤独からは逃げられない。そう感じた。
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涼空ｰSuzuraｰ(プロフ) - Chacoさん» コメントありがとうございます！！！Chacoさんの作品読んでいたのでコメント貰えてとても嬉しいです！！亀更新ですがこれからもどうぞよろしくお願いします！！ (2018年7月17日 20時) (
レス) id: 11ce629f49 (このIDを非表示/違反報告)
Chaco(プロフ) - とても誠実な薮くんといのひかの今後の展開がとても楽しみです！光くんの過去もとても気になります！！更新頑張ってください！！ (2018年7月17日 18時) (レス) id: ebaa553a11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼空-Suzuka - | 作成日時：2018年6月24日 19時
