終焉の先は亦今生

奇襲作戦『斜陽』八 ページ27

嗚呼、こんな私にも一つだけ。


「......、...なんて。」


手遊びにと頁をさらさらと捲り乍ら自嘲混じりに呟けば、其に応える様に本から桜か桃か花弁が舞い立ち書物は薄金に霧散したかと思うと形状を変貌させる。


「.....」


「やったじゃん！てかオダサクも安吾もAまで二刀かよ。いや、安吾は刀っていうか苦無だけどさ」


今し方迄持っていた本は原型を無くし、柄頭に純白の飾紐が丸四畳と二重叶結で踊る柳葉刀が二振り。二尺程の其は長過ぎず短過ぎず、片手ずつで振り回すには悪くない使い勝手だろう事が見て取れる。


基盤が『桃源蝶花』だから中国武術刀なのだろうか、とは思うが誰かに問うたところで応え等無いだろう。


「Aちゃんも無事に獲物手に入れた事やし、改めて悪者倒しに行きましょか」


作之助の号令に「はいはい」と返し再び歩むも、両手に握る柳葉刀を一瞥しては苦笑が漏れる。私の想いを聞き入れて二振りになったのだとしたら随分粋な事をしたものだ。


「治、お兄ちゃんなら可愛い妹に色々指南してね」


「おう！任せとけって。侵蝕野郎を圧倒する華麗な俺を見とけよ！」


こんな平穏で他愛無い時間ばかりなら良いのに。


そう思う私は潜書者失格だろうか。



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