検索窓
今日:10 hit、昨日:1 hit、合計:40,362 hit

奇襲作戦『斜陽』七 ページ26

「ねえ、ひとつ相談...というより質問なんだけど」


空を見上げれば白雲に紛れて文字が漂う奇天烈な空間。今となっては懐かしい戦後の風景。


それらに慣れて来た頃。


共に歩む彼等を見上げ、先程治によって遮られた話題を再度口にしてみる。


「侵蝕者って如何やって倒すの?」


「「.......はあ!?」」


聞き方が不味かったらしい。


盛大な驚愕が鼓膜を破らん勢いで突き刺さり、思わず両手で耳を塞げば其の様を見ていた佐藤先生は己の驚愕よりも彼等の反応が上回っていたらしく最早苦笑を浮かべている。


「いや、私初めてだし...」


そう。何を隠そう、というより隠す迄も無く潜書等初体験だ。


「あー...そう言えば、司書ちゃんがお前に潜書頼んで良いのか、って悩んでたな」


「.....何それ」


私では使い物に成りそうに無い、という事だろうか。今此処が戦場でなければ泣いているかも知れない。


「ま、まあ...其は兎も角や!侵蝕者と戦うにも武器が必要やろ?」


等と不穏な思考に走りかけていれば流石作之助とでも云うか、私の疑問に応える事で軌道修正を図ってくれる。


「その腰から提げてる本、出してみ」


彼が指し示した本。私が生み出し、私が転生させられた『桃源蝶花』は薄黄と淡紅が色調連続変化を見せ、其処に水線と花弁、蝶が色抜の形で配されている。


「Aちゃんはやっぱり『桃源蝶花』なんやね。ワシ等は各々持っとるその本を武器にして戦うんや」


「......投げ付けるの?」


本を武器にする、と言われ投擲するか背表紙で殴打する以外に思い浮かぶ人間がいるなら是非意見を聞いてみたい。


至極真面目だったにも関わらず「んな訳あるかい」と一蹴されては眉が寄るのも致し方無いだろう。


「本を武器に変えるんだよ!因みに俺はでっかい鎌な。さっくり切り裂いちゃう感じのやつ!」


「いや、うん...え?」


当たり前だろ!みたいな雰囲気で言われたところで疑問が解決する訳では無い。寧ろ謎は深まりに深まるばかりだ。


「あのな花染、其の本に何でも良い。お前の想いを込めてみろ」


困惑に当惑を重ねる私を見兼ねてか、佐藤先生が口添えをしてくれる辺り流石弟子門弟を沢山抱えるだけある、と関心して了う。


「想い....」


却説、誰より消極的な私に想い等あっただろうか。



.

奇襲作戦『斜陽』八→←奇襲作戦『斜陽』六



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
67人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

巫子(プロフ) - な、何とも素敵な小説……!色々細かく書かれていて凄いと思います。更新待ってます! (2018年3月3日 7時) (レス) id: c9541627c7 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎。(プロフ) - 三毛猫さん» お褒めの言葉ありがとうございます!細々とではありますが、緩く綴っていく所存ですので気長にお付き合い頂けると幸いです。 (2017年11月18日 20時) (レス) id: 3bc750f878 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫 - 語弊力がすごい…!更新頑張ってください! (2017年11月18日 16時) (レス) id: fa582e3f2e (このIDを非表示/違反報告)
雪兎。(プロフ) - 猫亮さん» 猫亮様:感想下さりありがとうございます!そう言って頂けるととても嬉しいです..!励みにさせて頂きます。御恥ずかしながら全くの創作物でして、意味が伝わりにくい場が多々あるかと思いますが、その際は御遠慮なく御指摘下さい...。 (2017年11月18日 10時) (レス) id: 3bc750f878 (このIDを非表示/違反報告)
猫亮 - 面白いです!文章も粋ですし、読んでいて引き込まれます。花染先生の詩や遺書等は何か参考になされたのですか?続き、楽しみにしています! (2017年11月15日 2時) (レス) id: 33b0ed1287 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雪兎。 | 作成日時:2017年11月2日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。