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Code.92 "手紙" ページ46

『その時の逃がした人達と私との約束で、定期的に連絡をするっていうのがあって、こうやって手紙を送ってくるの。逃亡生活って、中々他人に自分の本当の身分だったりを他人に話すことは出来ないでしょう?それで辛くなって、思い詰めた末に死を選んだりする人も一定数いる。』

『そういうのを防ぐためにこれを始めたの。まぁもちろん、私からの返信は"この組織を潰さない限り来ない"と伝えてあるから、最初から返信を期待している人なんていないんだけどね。』

へぇ、と頷きながら、彼は一つ一つの送り主の名前を確認していく。

降「スティーブン、てっきり死んだものだと思っていたが...」
『あぁ、彼は今アフリカに奥さんといる。』
降「あ、NOC疑惑のあったサラまで...これだけの数、よく逃がせたな...」
『ここに名前がある人は、ほんのひと握り。幸運な人達だけよ...』

明日から、この全てに返信を書かなければならない。
気が遠くなるような作業だが、凄く楽しみだったから、きっと頑張れる。

本当にこんな日が来るとは思わなかった。

『楽しみだったんだよ、これ見るの』
降「...」
『わ、ねぇ見て、子供のしゃしーー.....って、聞いてる?』
降「あ、あぁ、ごめん、」
『もう...』

珍しくぼーっとしていた彼に、ため息をつく。
疲れているのだろうか、大丈夫かな。

『零、疲れてるなら帰っていいよ? ごめんね、ほんと...』
降「...あぁ、すまない、そうさせてもらうよ。」

彼が椅子から立ち上がる。
やはり様子がおかしい。

『...れい?』
降「...ん、なに?」
『...なんでもない、またね。』

彼の静かな笑みは、私に問いかけることを拒ませた。

どんどん彼の背中が離れていく。
なんだか嫌な予感がする。


ーー待って、


腕をつかもうとして、やめた。
なんだか、掴んでは行けない気がした。


この時、無理やり掴んでおけばよかった





数時間後に、死ぬほどそう後悔することになることを、この時の私はまだ知らない。

Code.93 "拘置所"→←Code.91 "ひと握り"



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はな(プロフ) - にぃーさん» ありがとうございます!励みになります(;_;) (2019年11月8日 19時) (レス) id: 7c73f8d369 (このIDを非表示/違反報告)
にぃー - ほんまに早く読みたい!めちゃおもしろいです更新楽しみにしてます! (2019年11月4日 19時) (レス) id: def134aac7 (このIDを非表示/違反報告)
純花 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 19時) (レス) id: ba5f7bf38b (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろいです。続きが楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年10月19日 16時) (レス) id: c80821aeaf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はな | 作成日時:2019年9月6日 11時

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