2 わりといつものことです。 ページ2
「それにしても…随分背が高くなったわね。170はあるでしょう」
「多分。すごく目線が高いよ。」
「貴方背が小さかったものね…確か160ないくらい」
「うん。十センチ弱伸びた」
少女であるAに接していた名残か、ベルモットは彼の両頬を挟んでむにむにと弄ぶ。彼は彼でされるがままで、傍目からすれば異様、或いはとても珍しい光景であった。
「…ベルモット。それ、もしかして…A?」
「ああ、シェリー。いいところに来たわね。ええ、彼がAよ」
声を掛けられてベルモットは両手を降ろし、声を掛けてきた当人…シェリーへと向き直る。Aはと言うとふにゃりと柔らかく笑ってひらひらと手を振っていた。
それは元来からの彼女の癖だった。日頃から彼女と一緒にいることの多かったシェリーは当然ながらそれを見抜き、そしてやっぱり怒った顔をしてつかつかと歩み寄って彼の両頬をばちん!と挟む。
「貴方!また人に相談もしないで勝手に実験をしたでしょう!」
「…しぇりーしゃん、いたい…」
結構な勢いで結構な音がした。多分痛かった。現にAは涙目で頬を挟まれている。が、怒っているシェリーはそれに関してはそっちのけでお説教体制である。
ベルモットはとばっちりを避けるように、すいと足を下げて少し離れたところから眺める。いや、元々彼女当人もAに声を掛けられただけの通りすがりなのだから怒られる謂れはないのだが。
「ここのところの貴方の実験はわりと安全なものが多いけれど、それだって飽くまで致死性のない死に直結しないものってだけの話なの!仮に!貴方のその実験が悪い方向に進んで!貴方に害を及ぼしたらどうするの!」
「うええ…」
彼女の勢いに半泣きになりながらもそれでも目を逸らしはしないで説教を受けているところが何とも彼…Aらしいというか。悪いのは彼女一人なのだから当たり前と言えば当たり前なのだけれど。
シェリーが怒りっぽい、というわけではないのだ。普段の彼女は至極冷静で、気が動転して混乱することは稀のことだ。そんな彼女をここまで取り乱させるのだから、Aという存在はなかなか罪作りだ、とベルモットは人知れず笑った。
「おーおー、またお説教タイムかあ?懲りないなあ、A…Aだよな?」
「Aよ。面影も無くなってるけれどね」
騒ぎを聞きつけてかベルモットの隣に並んだのはスコッチだ。彼は可笑しげに笑い、仕方ないなと肩を竦めた。
3 そこにあるのは親愛と。→←1 天才は往々にして変人である。
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