276.どこかへ ページ3
「やっぱり、Aちゃんなら気付くと思った」
空間が割れ、中から鬼道で身を隠していた雛森が姿を現わした。
Aがやはりな、と呟く。鬼道で身を隠していた雛森の存在に気付くなんて、やはりこいつは只者じゃない。危険を感じた俺は雛森の側に行き、もう一度柄を強く握り締める。
「…私が頼んだの。どうにかして、あなたを止めたかったから。」
『どうして?』
「…私がまだ、Aちゃんを好きだから。」
『!』
「…勿論、憎いよ。信じてた皆を裏切って、傷付けた。絶対にあなたのことを許せない。それこそ、
何度も殺してやるって思った。次会ったら、必ず殺してやるんだって…でも、私は…あなたを…あなたを、憎みきれなかったっ!」
「Aちゃんっ、こんな事をしたのは、他に理由があるんでしょ?だって、何かよっぽどの理由がなきゃこんなことするわけないじゃない!あなたはこの世界が嫌だったからって言ったけど、それ、嘘なんでしょ?」
『…』
「Aちゃん‼」
「A、俺からも頼む。聞かせてくれ。お前が俺たちを裏切った理由を。」
「過去に何が、あったのかを。」
思い返せば、俺たちはAのことを何も知らない。
誕生日も、好きな食べ物も、どこにいたのかも、何も知らない。
.
「頼む。」
お前を、わかりたい。
『………』
.
.
.
『………_____私は、地下街で生まれた』
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作者名：EGOIST | 作成日時：2017年9月24日 13時
