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「実は爆豪との対戦も覚えてないの」
「うそ？」
「ほんと、わからない。気がついたら終わってた。」
母親曰く手に汗握る対戦だったようで顔に傷がつかないように祈っていたそうだ。
「私、記憶障害でもあるのかな？」
「それは、ないと思うけど。病院行ってくる？」
「病院…うん。いこうかな。怖いよね。何してるか覚えてないって」
あなたが不安なら行くべきとお金と保険証を渡した風架にそうだねと返すとそのまま玄関へと向かった。
「先生には電話しておくから」
「うん。いってきます」
病院へは、前親戚が入院していると拒架が教えてくれた場所だ。拒架もお見舞いに行っているはずだからもしかしたら会えるだろう。病院につくと迷う事なく歩いた
「多い…」
「あぁ、Aちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです。母から連絡いってますか？」
来てるから来たんだよと笑う彼は誘拐事件の時からお世話になっている先生だ。因みにヒーローとしても少しだけ名前があがる。Aはそのまま、診察室ではなくカウンセリング室へと先生と向かった。
「Aちゃん、まずは体育祭お疲れ様」
「ありがとうございます。」
「さて、お話を聞かせてくれるかい？」
先生に促され、風架に話したことを詳しく話した。時折、むむと難しそうな顔をすることはあっても話の腰を折ることはなかった。
「ふむふむ。」
「まだ、おかしいのかな？」
「そんなことない。Aちゃんが入院していたときにそばにいたいって泣いてた子どもたちがいるんだ」
先生は、それを自分達にすり替えてしまったのではと、あの時のAはいつ、意識が落ちるかわからない、不安定だったという。A自身、未だにあの時の事はぼんやりとしか覚えていない。
「そっか。また、記憶がおかしくなるの？」
「ちょっと、見てみようか」
「はい」
先生はそういうとAの額に手のひらを乗せて目を閉じた。淡い光がAを包んでいく。ふわふわと雲に抱かれているように、海を漂うような気持ちになりながらAも目を閉じた。
「うん。大丈夫だよ」
「ほんとに？」
「もし、万が一またあったらおいで」
最後にぽんぽんと頭を撫でるとにこりと笑ってAを送り出した。
「…さて。拒架くん」
「Aの記憶が戻りつつあるんだよね？」
「まさか、轟くんと出逢って仲良くなってしまうとはね」
ため息をついた先生は、成長が嬉しような寂しいようなそんな顔をしていた。
続→
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作者名：唯星 | 作成日時：2017年12月20日 21時
