2 ページ23
はじめは名前を
次は現世の食べ物ではないものを体に入れた、はじめは身体が拒否反応を起こして食べ物を戻してしまったときには焦った、でも少しずつ馴染ませていって、こちらの食べ物を美味しいと感じるまで馴染んだ、これでAが帰れなくなった。
そしてAと現世のつながりを断つために靴を燃やして捨てた、これでAはひとりじゃどこに行けなくなった。
着々と準備は進んで、油断した先に邪魔が入った。でもこの邪魔のおかげでAと現世のつながりを完全に消すことができた。
月明かりだけが差し込む暗い部屋の中で、俺の手の中で音を鳴らしてその存在を主張し続けるソレを片手で握りつぶす。
「しぃー、Aが起きちゃうでしょ」
物言わぬゴミとなり果てたそれに意味もなく語りかける。……まぁ、どんなに大きな音が鳴っても俺が起こさない限りAが目覚めることはないのだが。
穏やかに寝息を立てながら俺の腕の中で眠るAに愛しさがこみ上げて、きつく抱きしめる。
『ずっと、一緒に、幸せに暮らそうね』
あの言葉に嘘も偽りもない。ただ、ずっと俺と一緒にいてもらうことが条件だけど。大丈夫起きたらここにくる以前のことなんか忘れてて、はじめらからここにいたようにするから、何も心配しないで。
──この、箱庭の中で絶対に幸せにするからね、俺の、俺だけの花嫁A
かくして、永い孤独を生き続けたとある神は、現世の人間を彼岸に招き入れた。彼女はこれから永い時間彼の神とを幸せに過ごし続けることになるのだろう。
だってそれこそが彼の神の
──悲願だったのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
渦巻 - コメント失礼します。とても良い作品でした。この作品をつくって下さってありがとうございます！私とても幸せ者ですね…！ (2020年9月10日 22時) (
レス) id: acd4260d4c (このIDを非表示/違反報告)
鰻(プロフ) - 枯渇さん» 感想ありがとうございます。そう言っていただけると、書いてよかったなぁ、と思えます。 (2020年8月18日 15時) (レス) id: b0dd64a6e1 (このIDを非表示/違反報告)
枯渇(プロフ) - 突然失礼します。個人的にとても良かったです。尊さにより倒れさせていただきました。ありがとうございました。 (2020年8月17日 19時) (レス) id: cb6a865d2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鰻 | 作成日時：2020年8月13日 7時
