第３羽 ページ5
さらに月日は経ち、ぼくにとっての9回目の夏、つまり1937年7月、日中戦争が始まった。
僕と10歳年の離れた満兄さんは陸軍に入隊していて、いつ戦場に駆り出されてもおかしくない状況だ。
そんなある日の帰り道、橋を渡っていると、河原の方からわーわーと争うような声が聞こえた。
目を向けると、数人の少年たちが何かを蹴っている。
その後、彼らは気が済んだのか去っていった。
後にはボロ布の塊と、ぐちゃぐちゃになった紙くずが落ちていた。
しばらく見ていると、布の塊がモゾモゾと動き出し、周りの紙くずを拾っては、丁寧にしわを伸ばしていく。
いつの間にか、僕の足はそちらへ向かっていった。
僕が河原に降り、近付くと、そいつはピクッとし、僕の方を警戒しながらうかがっていた。
僕はしゃがんで、近くに落ちていた紙くずを拾い、しわを伸ばした。
その紙には、微笑む女の人が描かれていた。
「ねぇ？これ、君が描いたの？」
すると、そいつはおびえた声で「はい」と答えた。
「…へぇ。すごいね！」
と、僕が感心した声をだすと、「え？」と驚いて、顔をこちらに向けた。
傷だらけのその顔は、僕と同じぐらいの歳のように見える。
「だって！すっごく上手いよ！」
そう言いながら、近くにある紙を拾ってはひろげていく。
「ほら！これも。…これだって！」
興奮気味に絵を示す僕を、彼は不思議そうに見ている。
それから、小さな声で
「あ…アリ、ガト」
と、ポツリと言った。
あっ、と僕は思った。
彼は朝鮮の人なんだと気付いたからだ。
そうして、すべての絵を拾い終わり、彼が去ろうとしたとき
「僕の名前は、山崎清司。君は？」
僕の口は自然とそう言っていた。
別に、彼がかわいそうだとか、珍しいからとかそんな理由でなく、ただ友達になりたいと思ったからだ。
彼は少し戸惑ったあと、
「金 晶煥(キム ジョンファン)」と名乗った。
「そっか。よろしくね、ジョンファン！」
そして、僕らは握手を交わした。
これが僕とジョンとの出会いだった。
僕はこの時、彼と一生付き合っていくことになるとは思っていなかった。
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桜花 - 永遠の０などが好きで、特攻隊などに興味があります。更新頑張って下さい！ (2015年12月19日 17時) (
レス) id: 26ada15b3d (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - セルぱんさん» ありがとうございます！頑張ります(￣^￣)ゞ (2015年9月4日 19時) (レス) id: 87a7d21dee (このIDを非表示/違反報告)
セルぱん(プロフ) - 更新、楽しみにしています。とても良いと思いました。応援しています。 (2015年8月25日 23時) (レス) id: 9252549f2e (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - 紫姫春さん» その曲知ってます！いい曲ですよね〜。実はこの小説の題名もこの曲を参考にしてます (2015年6月25日 19時) (レス) id: 87a7d21dee (このIDを非表示/違反報告)
紫姫春 - ボカロの鋼鉄ノ鳥聴いて見てください (2015年6月20日 12時) (レス) id: ee13f6daae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒兎 | 作成日時：2014年3月10日 18時
