第1羽 ページ3
1928年2月29日、閏年
おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ
軍人一家に僕は生まれた。
威厳のある父、優しい母、そして利発な兄や怒るとこわい姉たちに囲まれてすくすくと成長し、あっという間に尋常小学校に入学した。
飛行機とご飯が大好きな、やんちゃ坊主。
これが周りの僕の見方だったようだ。
勉強は、あまり出来る方ではなかった。
いや、たぶん、やれば出来たんだろう。
毎日学校から帰ると、友達と野球など遊んでばかりいたのだから出来なくて当然と言えば当然である。
そんなある日、学校の国語の授業で、「将来何になりたいか」という作文を書く課題が出た。
次の授業で発表するらしい。
周りの子達はすらすらと書いている。
が、僕はなかなか書けない。
父様は軍人だし、満兄さんも将来は軍人になると宣言している。
そんな彼らを見ていると、僕もいずれ軍人になるんだろうなぁ、とは思っていたが、いざ文にしろと言われると、なんだか僕が本当になりたいものではない気がした。
ちらりと右をみると、「ぼくはぐんじんになります」と書いているのが見えた。
(あぁ、やっぱりか…)
今度は反対側を見る。
するとその席の主と目が合う。
「なによ」
この強気な発言をする隣人は、幼なじみの鈴子だ。
家が隣なのに、学校でまで隣だ。
どうやら彼女とは不思議な縁があるようだ。
「別に」
「あなた、なにも書いてないじゃない」
「夢が大きいから、まとめてるの」
思いつかないと言ってばかにされるのも癪なので、少し嘘をついてみる。
チラリと彼女の紙を盗み見ると、彼女も白紙だ。
「なんだ、鈴子なにも…」
「う、うるさい。私も何から書こうか悩んでるの!」
目が泳いでいる。
僕が皮肉を言おうとした時、
「おい、そこ。仲がいいのはいい事だが授業中は静かに」
先生に怒られてしまった。
「「ごめんなさい…」」
周りからは笑いが起こる。
そこで終わりの鐘が鳴る。
次回までに書いてくるように、とひと言残し教室から出て行った。
「あなたのせいで怒られちゃったじゃない」
と、小突かれる。
「ぼくのせいかよ…」
小声でいうと、
「なに?」
と睨まれる。
僕は肩をすくめ、その場をやり過ごした。
その日は遊びにいかず、部屋で作文をずっと考えていた。
珍しく部屋にこもっている僕を周りは心配していたようだ。
「清司さん、ご飯の時間ですよ。いらっしゃい。」
母が呼びにきた頃、ようやく作文が完成した。
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桜花 - 永遠の0などが好きで、特攻隊などに興味があります。更新頑張って下さい! (2015年12月19日 17時) (レス) id: 26ada15b3d (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - セルぱんさん» ありがとうございます!頑張ります( ̄^ ̄)ゞ (2015年9月4日 19時) (レス) id: 87a7d21dee (このIDを非表示/違反報告)
セルぱん(プロフ) - 更新、楽しみにしています。とても良いと思いました。応援しています。 (2015年8月25日 23時) (レス) id: 9252549f2e (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - 紫姫春さん» その曲知ってます!いい曲ですよね〜。実はこの小説の題名もこの曲を参考にしてます (2015年6月25日 19時) (レス) id: 87a7d21dee (このIDを非表示/違反報告)
紫姫春 - ボカロの鋼鉄ノ鳥聴いて見てください (2015年6月20日 12時) (レス) id: ee13f6daae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒兎 | 作成日時:2014年3月10日 18時