【04】 ページ50
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和也「八木といるとムカつくんだよね俺」
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そういや、朝。車窓の風景を見てたら、ぷっくり青空に浮かんだ白い月。
あれは何色だっただろうか。
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カタカタと際限なかったキーボードの音が途絶える。
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和也「つーか八木文乃って名前でムカつく」
文乃「…は」
和也「八木ってヤギかよ。紙食っとけや。文乃って文学系女子かと思いきや理系だし」
文乃「…人の名前ディスってんの？」
和也「その黒髪もムカつく。スーツはなんでパンツなの？睫毛なげぇし、指綺麗だし」
文乃「…はい？」
和也「急に泣き出すし。俺のバカみたいな人生賭けるような潤くん潰しには平気で乗ってくるし」
文乃「…」
和也「…なんなんだよ」
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和也「俺のこと好きなら好きって言えよ！」
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ーーーーー…あぁ。そうか。
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俺の言葉に目を丸くする八木。
お前、そんな顔もすんのね。へえ。
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俺だけでしょ、知ってんの。
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文乃「に…のみや…？」
和也「俺はさ。欲しいもんは今まで手に入れてきた主義なわけ」
文乃「…」
和也「自分の思った通りに事が進まなかったことはなかったわけ」
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和也「八木といると俺が俺じゃなくなるんだよ」
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ペースを掻き乱される、気持ち悪さ。
でも何故だろう。
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その気持ち悪さが、心地いい。
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文乃「…わ…たしは…」
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俺はね。生まれつき頭の回転が良かったんだ。
なのに。
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予測不可能な行動。
摩訶不思議な女。
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文乃「二宮がーーーーー…」
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言葉を塞ぐために、唇を塞ぐ。
デスクを挟んで。なんなら俺が立ち上がって前屈みになって。
顔を斜めにして、八木にキスをしたなら
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そっ…と唇を離したなら
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和也「…俺も好きだよ」
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俺の嫌いなもの。
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反して、俺の好きなもの。
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文乃「〜〜〜っ…、まだ好きなんて言ってない」
和也「でも好きでしょ？」
文乃「…、大嫌いよ！」
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二つの枠を制したのは
君が初めて。
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『黒い月のユウウツ』fin.
終わり
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