122. 搭乗アナウンス ページ2
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ザワザワたくさんの人が行き交う中でも
私の声はちゃんと社長に届いたみたいで。
『悪ぃ…、ちょっとおまえのこと見失ってた』
少しバツが悪そうな顔で
私の所へ戻って来た社長が
私の手から上着を受け取った。
「あの…社長、」
携帯が鳴ってたことを伝えようとしたのに
タイミングが良いのか…
タイミングが悪いのか…
NY行きの搭乗を知らせるアナウンスが
流れた。
『じゃあ、俺、そろそろ行くわ』
社長が自分の腕時計を見ながら言った。
「はい、お気をつけて。
……あのぅ、社長、、」
『ん?』
「搭乗口まで迷わないように、
行ってくださいね」
『おう、任せておけ』
言わなきゃ…と思いながら
着信のことは言いそびれたままの私。
『ちゃんと、戸締まりしてベッドで寝ろよ』
「はい。」
『おまえ、リビングのソファーで寝るの
得意だからな』
「もう、それは…あの時
…一回しかないじゃないですか」
疲れて、ついついソファで居眠りしてしまって
朝まで爆睡してしまったのは3日前の月曜日。
『きちんと、ベッドで寝ないと
疲れとれねーからな?』
保護者みたいなことを言う社長に
私も負けずに言い返してみる。
「社長もちゃんと食事してくださいね?」
『ああ。朝もちゃんと食うよ』
「ヨーグルトも果物を混ぜて
食べてくださいね?」
『大丈夫、ちゃんと食うから…笑』
本当かどうかは、わからないけど
取り敢えずは…
「お気をつけて…」
早く行ってください、と背中を押す私に
まだ何か言いたげな社長だけど。
再度流れた搭乗のアナウンスに
急かされるように
搭乗ゲートへと歩き出した。
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作者名:ミイ | 作成日時:2016年3月13日 0時