オレ様社長に恋をして 2 (ページ30)

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60. 素直なヤツページ30

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大野さんがプールから出て行くから

私も一緒に行きたいのに

なぜか、私の浮き輪を捕まえたままの社長。

「あの…社長、いい加減浮き輪を
離して頂けませんか？」

『俺は、別にこのままでいいけど』

少しだけ、腕の力を緩めた社長が笑う。

「私は良くないんですっ」

ぐいっと、社長の胸を押し返せば

少しだけ開く距離。

『なに、おまえ照れてるの？』

「照れてません」

とは、言いつつも。

浮き輪ごと社長に抱かれてるみたいな

この状態は…

いろいろとまだ未経験な私としては

刺激が強くてダメです…

『ホント、おまえって恥ずかしがり屋だよな』

「そ、そんなことは、ないと思いますが…」

揺れる浮き輪にしがみつきながら

チラッと社長を見上げると

私を見下ろすイタズラな目。

その目をしてる時は

意地悪なことしか言わないって

予想してますから…

『さっきのバカップルみたいに
したかったんだろ？
プールでイチャつきたいんだから
もっと喜べよ』

俺が叶えてやったとでも言わんばかりに

自信満々な笑顔を見せる社長。

「…別に社長とイチャつきたいなんて
思ってませんから」

思わず心の中の本音がダダ漏れてしまった。

『あ？足りないって？
もっと濃厚にイチャついてほしいって？』

「言ってません」

また、私との距離を詰めてこようとする社長を

慌てて押し止めたけど…。

『この連休中は敬語禁止。
理由は言わなくてもわかるよな？』

恋人のフリするんだからとか…

俺との約束を守らなかったらどうなるかとか…

そんな意味を全て含んだ“わかってるな？”に

逆らう勇気などない私が小さく頷くと…

『フッ…やっぱり俺の恋人にするなら、
素直なヤツが一番だな』

なんて、楽しそうに笑ったりするから

社長の腕から逃げ出すタイミングすら

分からなくなる。

「恋人のフリなんて、私…
どうしたらいいのか分からないです」

自分の今の気持ちを口にしても

社長はただ笑うだけ。

「…大きな、波が来ますよ、」

社長の後ろから来るビッグウェーブを見て

私は浮き輪にしがみつくふりをして下を向く。

―――もう、そんなに…

見つめないでくださいよ…。

自分で持て余し気味なこの気持ち

どうしたらいいかわからない…

もういっそ、私…この波にのまれたいです…。

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