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54. 集中力散漫 ページ24

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太ももまで覆っていたパーカーを脱ぐと

すぐに頭の上から浮き輪を被せられた。




『水着の上にこんな浮き輪付けても
パーカーほどの役目は果たせねぇな』





腰の辺りで浮き輪を手で支えてる私を見て

社長は不満げに呟いた。



……社長。

あなたは明治時代の人ですか。

私の父でさえ

そこまでうるさくは言いませんが。



そんな私の心の声など気づきもしないで

『ほら、グズグズしてないで水に入るぞ』

と顎をしゃくる。





子供みたいに浮き輪を腰にさげたまま

私は社長に追い立てられるように

波打ち際に立った。





「わっ、冷た…っ」




手を離せばストンと落ちてしまいそうな

大きな浮き輪を必死に手で支えながら

冷たい水に体をゆっくり慣らすように

足を進める。





太ももくらいまで、水に入った頃には

もう体もだいぶ慣れてきて…



ランダムに押し寄せてくる波が

浮き輪ごと私を押し流そうとしてくる。




プールの波に気をとられてた私が顔を上げると

すぐ隣にいたはずの社長はいつの間にか

私の前方に回りこんでいた。




「な、なんですか…」


『お前って、本当注意力散漫だよな』



ニヤリと意地悪い笑みを浮かべた社長に

イヤな予感がしたけど

身構える間もなく

強引に浮き輪を引っ張られて…




『さっさと水ん中に入れば、
こんなの平気なんだよ』


「わ…っ!!」




水面におもいっきりダイブさせられた私を見て

社長はおかしそうに笑う。




「ゲホゲホ!
…は、鼻に水が入ったじゃないですか!」




浮き輪にしがみつきながら

必死に抗議すれば

社長は私をバカにしたみたいに

見下ろしている。




「ゲホッ、ゲホッ…こんなことして
大人気ないとか思わないんですか?」



『ぜーんぜん思わねーよ
楽しいじゃん』





ほんと、腹が立つ。

変なとこで子供というか

いや、子供という無邪気さはない。



一瞬、真面目に溺れるかと思ったんですよ!






『お前のペースに合わせてたら
ここの営業時間が終わっちまうからな 笑』





俺って優しいだろ。

とか、意味のわからないことを言って

社長は必死に浮き輪にしがみつく私を引っ張り

プールの奥へと進んで行った。



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設定タグ: , 社長 , ミイ   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ミイ | 作成日時:2015年12月29日 23時

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