検索窓
今日:5 hit、昨日:5 hit、合計:77,160 hit

ドーナツ1 ページ26

ドーナツ


「ねぇA。俺好きな子できたんだ」

いつもの調子で話す普に"そう"っとだけ返す。どんな表情をしているのかも私自身わからない。普は私も見ながらニコニコ笑っているけど、笑えるぐらい普通の顔をしているのかな。
それとも、どうでもいいってこと?

「だからさ別れてほしくってね
昔はAから"さよなら"したでしょ?おあいこってことで」

ニカッ笑いながらする話でもないのに相変わらず雑談をするかのようにいう普に少し異常じゃないかと感じる。

「もし、ヤシロと付き合っても
Aは俺の助手だからね。
傍にいなきゃダメだよ

だって監視対象なんだから」

最後の一言に鳥肌が立つ。今なら自分の表情がどんな顔をしているのかわかる気がする。目を見開き、恐怖におののいている表情。

「A!A!」

必死に名前を呼ぶ普。そんな滑稽な姿に見えたのか。身動ぎひとつしない私を今度は揺らすのか視界が揺れる。

「A!」

声はもっと大きくなって聞こえた。それと同時に目の前にいるはずの普の姿は白モヤの中に消えるようにうっすらと溶けていく。

ふと目を開けると先程とは違い心配そうに覗き混む普が目の前にいた。
さっきまでの状況と情報が違いすぎて頭が混乱する。
普が何かに触れようとするのか手を伸ばした仕草をとっさに払ってしまう。
乾いた音が女子トイレに響いた。

「あっ...」

しまったと思うとふと周囲をゆっくり見渡す。日が高いことから昼ぐらいか、静まった校舎の様子からまだ授業の時間みたいだ。いつもの女子トイレの窓辺に腰掛けて座っている自分。

「Aうなされてたよ。
怖い夢でもみたの?」

「夢...?」

あまりにも生々しい内容に夢だったのか現実だったのかわからない程だった。
今もこうやって話す普から別れ話をされるのではないかと怖くさえ思う。

「怖かった...」

今も引きずる感情にポツリと言葉が漏れる。目の前にいた普が移動すると同じように窓辺に腰かけた。

ドーナツ2→←16時の書庫〈現在〉9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

璃炎(プロフ) - 黒猫さん» ありがとうございます。出来るだけ早く更新していけたらと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年3月7日 9時) (レス) id: 138083c01a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 続き気になります!体調気をつけて更新頑張ってください! (2020年3月7日 1時) (レス) id: fbc5b8317e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:璃炎 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/lampyridae/page/1/  
作成日時:2020年2月9日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。