誘惑 ページ48
『どうした?何があった随分と荒れているじゃ無いか。そうだな、君は今難しいものな。』
多感な時期だというのに世間は随分と不躾だよな。
彼等が同じ立場だったら君のように振る舞うことは出来ないだろうに、相手の立場になって考えなさい、か。
教師や親は子供に揃って同じ言葉を浴びせるが、どうしてこうも皆、出来んのだろうな、そんな単純なことが、そうやって自分が指導者の立場になった時口を揃えてまた同じことを言う。
つくづく難儀なものだな。世の中は。
そう思わないか?爆豪君?
『でも、私は違うよ。爆豪君。』
空気が変わる。
まるで母の腕に抱かれているような、干したての羽毛布団に包まれるような、
優しい優しい雰囲気がさっきまでの君の悪い影の落ちた雰囲気を一瞬で殺す。
『私は君の事を考えた行動をとるように努力するさ。なぁにどんな行動にも多かれ少なかれ本人にとっては重い理由があるものさ。』
フッと胸元に彼女がいた、頰を両手で包まれて、身体を引き寄せられて、駄目だ、動けない!
『理解するよ。その為に、私がいる。』
神野でのヤツの言葉を思い出す。
その為に僕がいるんだよ。死柄木弔
ゾッ、と身体の芯が凍りつく、息が荒くなる。
反響する声に、爆豪は気づけば爆破を起こしていた。
『ふぅん。ま、仕方ないか。
残念だ。君の個性はもちろんその中々にストイックな性格も私には随分と魅力的に見えてね、君の場合は個性を奪うよりも、そばに置いておく方が楽しめそうと思ったんだが。』
苦笑する彼女にまた冷や汗が流れ落ちる。
個性を奪ってもらった方がよほど良かった。
側に置きたいだって!?
コイツはもう俺の人生でさえも暇つぶしのおもちゃにしか思って無いのだ。
あの日、仮免会場で、貴方は悪くない。といったその声で、
あの夜、貴方が大切だといったその声で、
らしくもなく不器用な言葉遣いで言ったほんとうの気持ちと同じ声で。
己の最大限の魅力を駆使し、俺の人生を翻弄して掻き回して遊ぶ為だけに、俺を堕としにかかったのだ。
爆「AFOだろ。お前の個性。
知ってるぜ。俺はお前のことはお前以上に知ってる。何故、個性を奪わねぇ!?」
その回答に彼女が口淀めばよかった。
あれ?何故?
と忘れていても、忘れきれない記憶未満の片鱗でもいい。彼女が緑谷一澄であった形が欲しかった。
だが、爆豪の期待は、いいや懇願は最悪な形で裏切られることになった。
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かむかむ(プロフ) - Tyrant-unknownさん» リクエストありがとうございます!楽しんで貰えると嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年4月29日 23時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
Tyrant-unknown - お久しぶりです。またで申し訳ないですけどリクいいですか?弔くんと夢主ちゃんの恋人同士みたいなのがいいです。お願いします。名前が長ければTyrantでいいです。 (2019年4月29日 22時) (レス) id: f453f15264 (このIDを非表示/違反報告)
かむかむ(プロフ) - ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年4月4日 21時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
unknown - リクエスト受けてくださりありがとうございます。面白かったです。 (2019年4月4日 6時) (レス) id: f453f15264 (このIDを非表示/違反報告)
かむかむ(プロフ) - unknownさん» リクエストありがとうございます!楽しんで貰えると嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむかむ | 作成日時:2019年4月3日 0時