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Aは炭治郎に鬼として追いかけられたあの日から、自分の鬼としての部分が受け入れられず、食事も喉を通らない日が続いていた。

「…なんだか、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」

何度目かの偶然の逢瀬で、会ってから開口一番にそう言ってAを心配そうに見つめた炭治郎は、自分から目を逸らしたAの視線を追いかけるようにしてAの顔をのぞき込む。

「…A?」
「…最近、食欲がなくて…にん…、ご飯、を、食べてないの」

そう言って一瞬だけ炭治郎に目を向けるAは、いつもなら何とも思わない濡れた自分の服さえ重く身体にのし掛かるように感じて、明らかに体調が良くないのは自分でも感じていた。

「それは大変だ。何処か一瞬に食べに行くか?…あ、でもその濡れた身体じゃ…」

困ったように眉を下げてそう言った炭治郎は、すぐに何か思いついたように明るい表情になって、「そうだ、今度俺がおにぎりを作ってきてやる。…俺の炊くご飯は、美味いんだぞ!」と歯を見せて笑う。

「…うん。ありがとう…」

炭治郎の好意を素直に喜べない自分が心苦しくて、Aは視線を上げることなくそう言ってほんの少しだけ口角を上げる。

「…本当に、大丈夫か?今日は、家まで送ろうか?」
「ううん。大丈夫…」

そうは言いつつもやはり元気がないAに心配そうな様子を見せる炭治郎は、Aの額へと手を伸ばして、そのあまりの冷たさに驚きの声をあげる。

「A、身体がものすごく冷えてるぞ!早く着替えた方が…」
「大丈夫」

これ以上色々気にかけられても、いつか何かのボロが出そうで怖くなってしまって、Aはそのまま立ち上がって炭治郎に背を向けて歩き出す。

「A!…次の雨の日は、俺がおにぎりを作ってきてやるからな!」

炭治郎の声にAが後ろを振り向くと、炭治郎は笑顔で大きく手を振っていて、炭治郎はこんなに優しくしてくれるのに、Aは自分が鬼であるという事実が苦しくて、小さく手を振り返してすぐに再び歩き出す。

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チーズ(プロフ) - レインさん» 受験頑張ってくださいね!!! (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» レインさんー!お久しぶりです!実はあれ、消してしまったんです、、非公開にできないみたいだったので(;ω;) (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん!オチ誰にするアンケートに飛べなかったんでここでいいます!長男がいいです!29話の長男にやられたっ・・・!ものすごいお久しぶりですね!今年受験生なもので! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» 良かったです(笑)これからもよろしくお願いします(*^^*) (2020年1月15日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん» 許します。(*^∀^*)←なんで上から目線やねん。 (2020年1月13日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年12月21日 15時

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