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「…あ、」
聞き覚えのある声にAがゆっくりと視線を上げると、ここ最近ずっとAの頭を離れなかった少年の姿があった。
「えと…、濡れるのが、好きなんですか?」
また雨に濡れているAを見て、不思議そうに首をかしげながら問いかけたその少年に無言のまま首を横に振って、Aは少年から目を逸らすように足元に視線を落とす。
「…あの、俺、竈門炭治郎って言います。貴女の名前を、聞いてもいいですか」
恐る恐るといった様子でそう言った炭治郎に、Aはやや間をあけて「…A」と名乗る。
「A…、えっと、歳近いですよね…?敬語じゃなくても、いいですか」
ひたすらAの顔色を伺いながら話す炭治郎は、慌てて「嫌だったら全然それでもいいんですけど」と付け足す。
「…いいよ」
Aの返答に嬉しそうな笑みを浮かべた炭治郎は、「Aって呼んでもいいか?…あ、俺のことは炭治郎って呼んでくれ!」とまくし立てるように言う。
「うん。…炭治郎」
そう言ってほんの少しだけ表情を和らげたAに頬を染めた炭治郎は、「Aの瞳は、本当に綺麗だな」とじっとAの瞳を見つめながら明るく笑う。
「……」
「あ、ごめん!こんなこと、言われ慣れてるよな」
慌てたように両手を左右に動かした炭治郎は、気を取り直したように「家はこの近くなのか?」とAに問いかける。
「…うん」
「そうか!俺はお館さまのお屋敷がここの近くだから、任務終わりにはここをよく通る。…また、会えるかもしれないな」
お館さま、という言葉に反応したAに、「…あ、俺、鬼殺隊っていう組織に入っているんだけど、その組織を取り仕切られているのが、お館さまで…」と説明を付け足す。
鬼殺隊を取り仕切る、お館さま。
それは、無惨さまがその居所を探し求めている、産屋敷輝哉のことではないか?
そう思い当たったものの、それを無惨に報告するのはつまり、この優しい笑みを浮かべている炭治郎を裏切るということで、まだもう少しその優しさに触れていたいと思ってしまったAは、無惨にそのことを報告せず、雨の日にだけ偶然会える炭治郎との逢瀬を、いつしか楽しみだと感じるようになってしまった。
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チーズ(プロフ) - レインさん» 受験頑張ってくださいね!!! (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» レインさんー!お久しぶりです!実はあれ、消してしまったんです、、非公開にできないみたいだったので(;ω;) (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん!オチ誰にするアンケートに飛べなかったんでここでいいます!長男がいいです!29話の長男にやられたっ・・・!ものすごいお久しぶりですね!今年受験生なもので! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» 良かったです(笑)これからもよろしくお願いします(*^^*) (2020年1月15日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん» 許します。(*^∀^*)←なんで上から目線やねん。 (2020年1月13日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年12月21日 15時