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極限まで人間を絶ち続けて、どうしても我慢できなくなってしまった雨の日。

色んな理由をつけて自分を納得させて、Aが無限城の外へと出ると雨の日だからいつもよりは薄いが、食欲をそそる人間の匂いと冷たく身体を打つ雨の感覚に思わず身震いをしてしまう。

気を抜くとよだれが垂れてしまいそうなほど人間にそそられている自分に、所詮お前は鬼だと誰かに笑われている気がして、Aが慌てて自分の耳を塞いで座り込んだとき。

「…A?」
「!…炭治郎…」

まるで見計らったかのように呼ばれる自分の名前に、Aは何故か全て許されたような、炭治郎なら自分の全てを受け入れてくれるような、そんな不思議な心地になる。

「良かった、やっと会えた!最近あまり外に出なかったのか?顔色も前より酷くなってるぞ。…そうだ、ちゃんとおにぎり作ってきたぞ」

優しい笑みを浮かべて、ずっと会えずにいたAを心配していたのか、怒涛のように話しかけた炭治郎は、そのまま座り込んでいるAを「少しだけごめんな」と言って横抱きにして歩き始める。

「た、炭治郎…?」
「歩けないほど辛いんだろ?…大丈夫、雨宿りできるところに移動するだけだ」

優しい声、優しい笑み、温かなぬくもり。
Aが求めていたもの全てを惜しみなく分け与えてくれる炭治郎に、Aは途端に訳もわからず涙が溢れて止まらなくなる。

「…。俺、Aと会えない間に色々あったんだ。…善逸と伊之助っていう子たちと一緒に任務をするようになったり、その任務中に大きな怪我したり…」

真っ直ぐ前を見据えながらそう話し始めた炭治郎は、そのままAには目を向けることなく話を続ける。

「特に怪我をした時は、いつも思ってた。…ここに…、俺の隣に、Aが居てくれたらなぁって」

はにかむような笑みを浮かべて「それでさ、」と自分に目を向ける炭治郎に、Aは頭のどこかで、これ以上は聞いちゃ駄目だ、とまるで警告音のように何度も鳴り響く声が聞こえる。

「…もし、Aが…許嫁が居たり将来は親が決めた相手と、っていう家の出じゃないなら…その、俺と恋仲になってくれたり…、しないかな」

運命はいつだって残酷だ。
このどこまでも優しい少年を、裏切れと、欺けと、魅惑的な甘い声で囁いて、私と少年の行く末を血のような紅い瞳を細めて見ているのだ。

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チーズ(プロフ) - レインさん» 受験頑張ってくださいね!!! (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» レインさんー!お久しぶりです!実はあれ、消してしまったんです、、非公開にできないみたいだったので(;ω;) (2020年5月18日 17時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん!オチ誰にするアンケートに飛べなかったんでここでいいます!長男がいいです!29話の長男にやられたっ・・・!ものすごいお久しぶりですね!今年受験生なもので! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» 良かったです(笑)これからもよろしくお願いします(*^^*) (2020年1月15日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん» 許します。(*^∀^*)←なんで上から目線やねん。 (2020年1月13日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年12月21日 15時

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