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次の日、鬼の形相で教団へとやってきたAの父親は、Aを見つけるなり話を聞くこともせず激しく顔を殴りつけた。


「…お父さん。子供をそのように殴るものではありません」
「きょ、教祖様…!」
「Aは昨日、両親を一度に亡くした俺を心配して、悲しみで眠れない俺を一晩中慰めてくれたのです」


大粒の涙を流しながらそう告げれば、父親の怒りも少しは収まったのか、「ですが、教祖様…、」と落ち着いた様子を見せる。


「さすが信心深いお父さんの娘です。教祖である俺を心配して一晩中ついていてくれるなんて…。なんと心の綺麗な子なんでしょう…」


そのまま昨日のAの泣き声を真似してみせれば、感動したように跪く父親は、「これからも、親子共々よろしくお願い致します」と言って静かに教団を出て行く。


「……」


父親を無言で見送ったAは、初めて会った時のような感情の読めない瞳をして、「童磨…」と俺の名前を呼んだかと思うと、突然腕を掴まれてそのまま早足でAに引きずられるようにして歩き出す。


「…A?」


呼びかけにも応じずどんどん歩みを進める先に見えてきたのは、丘一面に広がる色とりどりの花たち。


「…!」


素直に美しいと思える景色に思わず立ち止まってしまった俺を振り返って、Aは「綺麗でしょ」と目の前に広がる花たちよりも綺麗に微笑む。


「辛いことがあった時は、いつもここに来るの。…すごく、明るい気分になれるから」


ああ、これは何だろう。
すごく胸がざわざわする。


「無理やり連れ出しちゃってごめんね。…どうしても、一人になりたくなくて…」


申し訳なさそうに眉を下げたAに笑顔すら返すことができず、俺はただただ綺麗な笑顔を見せるAを見つめる。


「…童磨?」


そう言って心配そうに自分を見つめるAと目が合ってようやく我に返り、「すごく素敵なところに連れてきてくれて、ありがとう」と笑顔を作ってみせる。


「ふふ。気に入ってもらえて良かった」


その日から、その時感じた感情らしき何かを確認するかのように、教祖としての役目を終えた夜や早朝、その丘に通うのが新たな日課となった。

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チーズ(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、そして最後までお読みいただきありがとうございました! (2019年12月18日 9時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» ありがとうございます(^^) (2019年12月18日 9時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
なな - すっごく面白かったです。長すぎず短すぎず読みやすいし…この作品作ってくださりありがとうございました (2019年12月18日 7時) (レス) id: 1bb73627c8 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - チーズさん» え、うちの方が大好きです! (2019年12月17日 22時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - レインさん» レインさん!コメントありがとうございます!こちらの童磨も、なかなか切ない結末ですもんね、、私はむしろ、一つ一つ丁寧に感想をくださるレインさんが大好きです! (2019年12月17日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年12月14日 17時

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