美少年 【嘴平伊之助】

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「…A、もう眠い…」


Aの様子がおかしいことより自分の眠気の方が勝っているらしい伊之助は、うつらうつらしながら部屋に戻り、Aが布団を整えている間に畳の上で寝息をたて始めてしまう。


「伊之助、起きて。布団敷けたよ」
「んんー、」


先ほど無理やり起こしてしまって申し訳なさが残っているAは、伊之助を布団まで移動させてあげようとするものの、重すぎて断念するしかない。


「お、重い…。背はそんなに変わらないのに」


たった一人で生き抜くため鍛えぬかれた身体を思えば納得できる重さに、Aは掛け布団の方を持ってきて伊之助と一緒に畳で寝ることにする。


「…もう、一人じゃないからね」


まるでAの声が聞こえているかのように目蓋を閉じたまま口角を上げた伊之助は、「…A、」と小さな声でAの名前を呟く。


「ふふ」


何度も呼びかけられる自分の名前を聞きながら、Aはもう少し、私は伊之助に愛されているんだと自惚れてもいいのかもしれない、と小さく笑みをこぼす。


「…おやすみ」


目蓋を閉じたあとも聞こえる、自分の名前を呟く伊之助の優しげな声に、Aはそっと伊之助に身体を寄せたあと、その安心する匂いを胸いっぱいに吸い込んで、今度こそ眠りについた。

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