検索窓
今日:13 hit、昨日:59 hit、合計:630,440 hit

3 ページ3





外から見ると煌びやかに見えていた貴族たちの生活も、ひとたび中に入ってしまえばそうでもないのだとAは思い知らされていた。

「今度ご一緒に、お茶会など如何ですか」
「…。申し訳ありません。このところ、体調が優れなくて…」

今まで一度も女に興味を持ってこなかった月彦が妻を娶ったとあって、そのAに取り入れば妾にしてもらえると目論む者たちが、Aの周りには溢れていた。
事あるごとに月彦に呼ばれて世話をしているAは、現実的な意味でもその誘いに乗れる日は少なく、それでも執拗に誘ってくる彼女たちに、恐怖すら感じていた。

「A」
「はい」
「!」

突然現れた月彦に目の色を変えて後ろを振り返る、先程までAを熱心に誘っていた女性は、今度は月彦に笑顔で誘いをかける。

「…申し訳ございません。お気持ちは嬉しいのですが…。ようやく娶った妻が、可愛くて可愛くて…片時も離れたくはないのです」

よそ行きの笑顔を浮かべながらそう言った月彦に、「まぁ素敵!」と微笑んだ女性は、月彦に促されて静かに部屋を出て行く。

「…あの女、二度と屋敷に入れるな」
「え、ですが…」
「なんだ」

先程とは打って変わって冷たい表情を浮かべる月彦は、早足でAに近付いてきたと思ったらいきなり着物をはだけさせ、あらわになったAの首筋に、思いきり歯をたてる。

「いっ、」

血が滲むほど強く噛まれたことに驚いてAが身を硬くしていると、くっきりと残った歯型に一転機嫌を良くした月彦は、今度はその首筋にゆっくりと舌を這わせる。

「っ、」

痛いのかそうじゃないのかよく分からなくなってきたAは、思わず漏れそうになる吐息を唇を噛みしめて我慢する。

「他の人間に割く時間があったら、もっと私を満足させることに注力しろ」
「…はい」

素直にうなづいたAに、先程の女性に向けたような優しげな笑みを浮かべた月彦は、「それでいい」とAの頬を優しく撫ぜた。

4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (960 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1587人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨 , 月彦
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。