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鬼舞辻の名を口にしても死なない。
鬼舞辻の血がとても濃いはずなのに、戦い方も知らない。
そんなAの様子に自分や他の鬼との何か大きな違いを感じた珠世は、「貴女は、鬼舞辻の何ですか」と決定的な問いかけをする。
「私は……、っ、ごめんなさい。全部私のせいなのです。月彦さまには、私が居なければ駄目だと分かっていたはずなのに…己が身の可愛さに、逃げ出してしまったのです」
珠世の問いかけには答えずそう言って涙を流したAは、「どうかお許しください」と戸惑う珠世と兪史郎に深く頭を下げる。
「おっしゃる意味が…」
「私は、月彦さまの妻でございました。妻ならば、どんなに苦しく辛くとも夫の側に寄り添い、耐え忍ぶのがその勤め…。全て、私の至らなさでございます」
「き、鬼舞辻の妻って…!」
いつの間に降りてきたのか、驚いたように声をあげた炭治郎がAに駆け寄り、「そのAさんが今、俺たちと一緒にいるって…とんでもない切り札になりますよ…!」と興奮したようにAの肩を揺さぶる。
「…たしかにそうです。ですが、Aさんの目的によっては…」
「私の思いは、月彦さまにこれ以上人を殺して欲しくないということ…たくさんの方にご迷惑をおかけしたのなら、それは償わなくてはいけない、ということです」
珠世の言葉に答えるようにそう言ったAは、そのまま炭治郎の両手を握りしめて「私を貴方の主のもとへ、連れて行ってください」と言ったあと真っ直ぐに炭治郎を見据える。
「え…で、でも、鬼殺隊は鬼を…、もしかしたら、Aさんだって…」
「それはそれで構いません。その時初めて、月彦さまも愛する者を失う悲しみを、知ることになるのです」
Aのその言葉にAの並々ならぬ覚悟を感じとった炭治郎は、大きくうなづきながらAの手をしっかりと握り返す。
「人を襲わない鬼は、救われてもいいはずだ。…大丈夫。俺も一緒に…ずっと隣にいます」
「…ありがとうございます」
そう言って初めて見せたAの気を許した笑みに、炭治郎は一瞬動きを止めたかと思うと、慌てて視線を逸らしたのだった。
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チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時