検索窓
今日:12 hit、昨日:14 hit、合計:629,480 hit

7 ページ26





鬼舞辻の名を口にしても死なない。
鬼舞辻の血がとても濃いはずなのに、戦い方も知らない。
そんなAの様子に自分や他の鬼との何か大きな違いを感じた珠世は、「貴女は、鬼舞辻の何ですか」と決定的な問いかけをする。

「私は……、っ、ごめんなさい。全部私のせいなのです。月彦さまには、私が居なければ駄目だと分かっていたはずなのに…己が身の可愛さに、逃げ出してしまったのです」

珠世の問いかけには答えずそう言って涙を流したAは、「どうかお許しください」と戸惑う珠世と兪史郎に深く頭を下げる。

「おっしゃる意味が…」
「私は、月彦さまの妻でございました。妻ならば、どんなに苦しく辛くとも夫の側に寄り添い、耐え忍ぶのがその勤め…。全て、私の至らなさでございます」
「き、鬼舞辻の妻って…!」

いつの間に降りてきたのか、驚いたように声をあげた炭治郎がAに駆け寄り、「そのAさんが今、俺たちと一緒にいるって…とんでもない切り札になりますよ…!」と興奮したようにAの肩を揺さぶる。

「…たしかにそうです。ですが、Aさんの目的によっては…」
「私の思いは、月彦さまにこれ以上人を殺して欲しくないということ…たくさんの方にご迷惑をおかけしたのなら、それは償わなくてはいけない、ということです」

珠世の言葉に答えるようにそう言ったAは、そのまま炭治郎の両手を握りしめて「私を貴方の主のもとへ、連れて行ってください」と言ったあと真っ直ぐに炭治郎を見据える。

「え…で、でも、鬼殺隊は鬼を…、もしかしたら、Aさんだって…」
「それはそれで構いません。その時初めて、月彦さまも愛する者を失う悲しみを、知ることになるのです」

Aのその言葉にAの並々ならぬ覚悟を感じとった炭治郎は、大きくうなづきながらAの手をしっかりと握り返す。

「人を襲わない鬼は、救われてもいいはずだ。…大丈夫。俺も一緒に…ずっと隣にいます」
「…ありがとうございます」

そう言って初めて見せたAの気を許した笑みに、炭治郎は一瞬動きを止めたかと思うと、慌てて視線を逸らしたのだった。

8→←6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (960 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1584人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨 , 月彦
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。