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世は倒幕、攘夷などと騒いでいる中、そこら中で戦が相次ぎ、Aも商売どころではなくなり、それと同時に周りは戦火から逃れた人間で溢れ、いつか自分の本性が周りに気付かれてしまうのではないか、と常に気が気ではなかった。

大丈夫、人より長生きなだけ。もうずっと人間は食べていない。
そう自分に言い聞かせてみても、心の中を巣食う不安は簡単には拭えなくて、助けを求めに来る人間を笑顔で介抱してやりながらも、頭の中にはいつも重暗いものが渦巻いていた。

そんなある日の夜、聞きなれぬ誰かの悲鳴によって目を覚ましたAは、瞬間、いつもの誰かの怪我を手当てしてやる時とは比べられないほど濃く漂う新鮮な血の匂いに、思わずよだれが垂れそうになるほど食欲をそそられるのを感じる。

「うっ、」

あまりの飢餓感に吐き気をもよおし胃の中のものを吐き戻したAは、そのまま慌てて家の外に飛び出す。

「!」

そこに広がっていたのは、逃げ惑う人々と、それを追いかけ回しどんどん八つ裂きにしていく人らしき影。

止めなきゃ、とAは斧を手に渦中に飛び込んでいくものの、その人だが人らしくない出で立ちをした者は、どうやら言葉が通じないようだった。

「やめなさい!あなた、どうしたの!」

Aの言葉を無視して人を襲い続けるそれに、Aは仕方なく片足を切り落とすものの、すぐに元に戻る片足に自分と同じものを感じてしまったAは、とてつもない寒気に襲われる。

「ひいっ、人食い鬼だー!」

最近噂になっている人食い鬼。
それは私のことだったのか、と思わずこんな状況であるのにも関わらず、Aは喉の奥から乾いた笑いが込み上げてきてしまう。

なんだ、そうか、私は鬼なのか。
Aは乾いた笑い声をあげながら、なぜだか溢れて止まらない涙を我慢することができなかった。

3→←後編



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チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時

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