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秘境の地での月彦との生活は、実に穏やかだった。
夜遅くに出かけて夜明け前に戻る月彦は、いつもAのために肉を狩ってきて、肉の保存のために使われている小屋に近付いてはいけない、ということと陽が昇っている時は外に出てはいけない、ということ以外は、自由に過ごさせてもらっていた。

「月彦さまが狩ってきてくださるお肉は、何故だか今まで口にしてきたものより、より一層美味しく感じます」
「そうか。たくさんある、よく食べろ」

Aとの生活を邪魔する者の居ない空間では、月彦はいつも上機嫌で、これまであの屋敷でたびたび不機嫌になる月彦を諌めてきたAとしては、あの日々がまるで遠い昔であるかのような錯覚すら感じていた。

「ところで…、何故、昼間は外へ出てはいけないのでしょうか」
「お前が一人の時に、何かあっては大変だからだ」
「では何故、雨戸も閉めて暗闇の中で過ごさなくてはいけないのですか?」

陽には当たれないからだ、とも言えない月彦はしばらくの間口をつぐみ、困った表情を作って「許せ、美しいお前を誰にも見せたくないのだ」と言えば、Aは驚きつつも嬉しそうな表情で「ご冗談を」と言いつつも、「そういうことなら仕方ありませんね」と微笑んでみせる。

「なんせこの私が一目惚れするほどだからな」

目を細めながらそう言った月彦に、Aは頬を赤く染めて「嬉しいことばかり言わないでください」と顔を俯かせる。

そんなAの仕草に「なんだ、誘っているのか」と優しくAを押し倒した月彦は、Aの返事を待つことなくその愛らしい唇をひと舐めする。

「な、なにを…!」
「お前の誘いに応じただけだ」

そう言って今度は唇を重ねてAの舌をゆっくりと絡めとった月彦は、甘い吐息をもらすAの着物の合わせに、そっと手を差し入れた。

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チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時

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