私を、愛して 参 【鬼舞辻無惨】

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「…本当に、良かったです」


赤ん坊に授乳するため二人きりになった部屋で、Aの乳を懸命に飲む赤ん坊を見つめながらそう言った無惨は、「何がですか？」と微笑むAに「…この子も、Aさんも、無事で」と眉を下げながらAに目を向ける。


「…。陽の光も平気そうだし、母乳も普通に飲んでますし、…本当に、ただの人間ですね」


無惨の不安がる気持ちを汲みとってか、そう言って笑ったAは、満足したのか眠り始める赤ん坊をそのままゆっくり布団へと下ろす。


「…Aさんに似て、可愛らしいですね。とても…」
「えっ、私は無惨さんに似て、とても美形だと思うんですけど」


お互いの言い分に顔を見合わせあったあと、二人で赤ん坊の顔をのぞきこんで、「言われてみれば、どちらにも似てる気がしますね」と二人同時に言う。


「…ふふ」


また同時に笑い声を漏らして、自然と距離が縮んだかと思うとゆっくりと唇が触れ合う。


「…ん、」


ひたすらゆっくりと、優しく労わるような口付けに無惨の心の内まで伝わってくるようで、Aは思わず笑みがこぼれてしまう。


「…何故笑うのですか」
「無惨さんが…あまりにも優しくて」


ふふ、ともう一度Aが笑い声をこぼすと、今度は荒々しく唇を塞がれて強引に舌を絡めとられる。


「んんっ、」
「…っ、怖かったんです。…Aさんを、失ってしまうのではないかと…」


目の前で揺らめく無惨の瞳にその切実さを感じとったAは、無言のまま無惨の指に己のものを絡めてきつく握りこむ。


「私がどれほど、Aさんに焦がれているか…。Aさんには一生、分からないでしょう」
「…、そうですね。私は無惨さんのために…鬼には、なれませんでしたから」


でも私は、命をかけてこの子を産みました、とAは慈しむような瞳を赤ん坊に向ける。


「…はい」


それ以上は言葉にならないとでも言うように唇を噛みしめた無惨は、Aの肩口に顔を押し付けて震える息をゆっくりと吐き出す。

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